セキュラム

セキュラム (Securum) について

セキュラムは、1992年のスウェーデン金融危機という未曽有の経済危機の中で、不良債権の処理と金融市場の安定化を目的として設立された国有の資産管理会社です。一般的に「バッドバンク」と呼ばれる組織の代表的な事例として知られています。

設立の背景

1990年から1994年にかけてのスウェーデンは、深刻な金融危機に見舞われました。この危機の中で、ノルド銀行は部分的に国有化されることとなりました。セキュラムは、この国有化されたノルド銀行が抱えていた巨額の不良債権を回収するために設立されました。当時のスウェーデン経済は不動産市場の低迷により大きな打撃を受けており、多くの不動産関連企業が深刻な負債を抱えていました。セキュラムの設立は、これらの不良債権を処理し、資産市場の安定化を図る上で不可欠な措置でした。

設立当時、カール・ビルト内閣の財務大臣はアンネ・ヴィブレ、商工大臣はペール・ヴェステルベリが務めていました。

セキュラムの活動

セキュラムは、ノルド銀行から1274社（うち790社が上場企業）に対する3000件もの融資、すなわち、銀行資産の約4分の1にあたる不良債権を引き継ぎました。その中でも最大規模の融資は、ノーベル工業（現在のアクゾ・ノーベル）に対する240億スウェーデン・クローナ相当のものでした。セキュラムは、政府から240億クローナの株式資本と、270億クローナの融資を受け、合計510億クローナの資金を運用しました。

セキュラムは、その運営において高い独立性を保っていました。1994年の夏までに、多くの融資が回収され、その活動は急速に進展しました。その後、製薬会社のノーベルファーマ（現在のノーベルバイオケア）、空港グランドサービス会社のサービスエア、そして不動産管理会社のカステルム（北部）、ノルポルテン（その他地域）、パンドックス（ホテル不動産）の3社の株式を市場で募集しました。これらの資産売却により、セキュラムは不良債権の回収を加速させました。

1997年、セキュラムはその役割を終え、清算されました。

成果と影響

セキュラムの活動には、総額635億クローナ（GDP比4.4%）の公的資金が投入されました。しかし、最終的には、それを上回る670億クローナの回収に成功しました。この成果は、セキュラムが単に不良債権を処理するだけでなく、スウェーデン経済の回復に大きく貢献したことを示しています。セキュラムの設立は、当時の財政支出がGDP比でEUの基準を超過していましたが、スウェーデンが当時EUに加盟していなかったため実現しました。セキュラムの成功は、後の日本の産業再生機構のモデルになったとも言われています。

外部リンク

世界経済の潮流 2003年春 第２章　産業再生−北欧・アジアの経験/内閣府
スウェーデンの不良債権処理策 『レファレンス』 No.645/国立国会図書館編

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