タカアシガニ

タカアシガニ（高脚蟹）

タカアシガニ（学名: Macrocheira kaempferi）は、クモガニ科に属する大型のカニです。その名の通り、非常に長い脚を持つことが特徴で、現存する節足動物の中では世界最大の種類として知られています。系統的には古い種であり、「生きた化石」と呼ばれることもあります。

概要

タカアシガニの脚には、白色のまだら模様が見られます。特に成体のオスは、鋏脚が脚よりも著しく長くなることがあり、鋏脚を広げた際の全長は3.8メートルにも達することがあります。甲羅は楕円形で丸みを帯びており、最大で甲幅40センチ[[メートル]]、体重19キログラムに達します。複眼の間には斜めの棘が突き出ているのも特徴です。若い個体では甲羅に毛や棘が多いですが、成熟するにつれて減少します。

生息域

タカアシガニは、岩手県沖から九州にかけての太平洋岸、東シナ海、駿河湾、土佐湾などの水深150 - 800メートルの深海に生息しています。特に水深200 - 300メートル付近に多く見られます。産卵期である春には、水深50メートル程度の浅瀬に移動することが知られています。かつては日本近海固有種と考えられていましたが、1989年に台湾の東方沖でも発見されました。

食性

タカアシガニは雑食性で、貝類などの甲殻類を好んで食べます。強靭な鋏で貝殻を砕いて中身を食べる様子は、まさに深海のハンターです。鋏の内側には球状の突起が多数並んでおり、くるみ割り器のように硬い物を割るのに適した構造になっています。

近縁種

タカアシガニ属（Macrocheira属）には、現生種としてはタカアシガニ1種のみが存在しますが、化石種が4種類報告されています。これらの化石種は、アメリカ合衆国ワシントン州や日本国内で発見されており、タカアシガニの進化の歴史を紐解く上で重要な手がかりとなっています。

Macrocheira teglandi：アメリカ合衆国ワシントン州で発見
チヨガニ（Macrocheira yabei）：長野県で発見
Macrocheira ginzanensis：山形県で発見
Macrocheira longirostra：アメリカ合衆国ワシントン州で発見

これらの近縁種は全て絶滅しており、タカアシガニの貴重さを示しています。

利用

タカアシガニは、一部の地域では食用とされていますが、産地以外ではあまり馴染みがありません。水揚げ後の鮮度保持が難しく、身が溶けやすいことが理由として挙げられます。しかし、近年では地元料理として注目を集めており、塩茹でや蒸しガニなどで食されています。メスの方が味が良いとされていますが、巨体の割には可食部が少ないのが難点です。漁獲地は相模灘、伊豆七島周辺、駿河湾、熊野灘、土佐湾などですが、産卵期の春は禁漁となっています。特に駿河湾ではタカアシガニが観光資源となっており、資源保護のための種苗放流も行われています。

伊豆での漁法と漁期

戸田漁港：小型底曳き網（9月 - 翌年5月15日）
田子漁港：かご漁（12月 - 翌年2月）

食用以外にも、研究用や装飾用の剥製、魔除けとしても利用されています。性質がおとなしく飼育しやすいことから、水族館などでも展示されています。

タカアシガニはその独特な姿と生態で、私たちを魅了する深海の生物です。

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