ティアマト

ティアマト

ティアマト（英: Tiamat）は、メソポタミア神話における原初の海の女神として知られています。彼女は淡水の神アプスーと結びつき、彼から次世代の神々を生み出しました。代表的な神々には、恵みをもたらす巻き毛の男神ラフムと、彼の姉妹である女神ラハムがいます。この兄妹は、アンシャルとキシャルという新たな神々を誕生させ、さらには天空神アヌに繋がる新しい神々を生んでいく存在です。

ティアマトは、原初の創造における混沌の象徴として描かれることが多く、主に女性としての姿を持つことが特徴です。彼女はしばしば強烈な輝きを放つ存在として表現され、その容姿は人間の形ではなく、様々な異形の姿を持つとされています。特に彼女の大きな体は、周囲の世界を形成する素材として利用されるとされ、「大洪水を起こす竜」と称えられることもあります。彼女の姿はウミヘビや竜と同一視されることもありますが、その明確な記述は神話には存在せず、現代では水の姿と動物の形の間で揺れ動いていると解釈されています。

呼称と語源

ティアマトは、『エヌマ・エリシュ』というバビロニアの創世神話の中で“Ummu-Hubur”とも呼ばれます。この名前の「Ummu」は“母”を、「Hubur」は諸説ありますがシュメール語の「河」と関連しています。また、ティアマトという名前はアッカド語の「海」を指す単語tâmtuに関連していると考えられています。言語の接触により、ティアマトは後のヘレニズム世界でもタラッテーとして知られ、特にギリシャ語のタラッサと関連付けられています。

ティアマトとエヌマ・エリシュ

『エヌマ・エリシュ』では、ティアマトが自ら生んだ神々と対立し、特に英雄マルドゥクとの戦いが描かれています。物語の発端では、彼女とアプスーが共同で神々を生み出したものの、神々の数が増えたことでアプスーが彼らを滅ぼそうと企てます。これに対抗した知恵の神エアがアプスーを殺害し、その後ティアマトは復讐のために戦いを決意します。

最終的にティアマトは多くの怪物を生み出し、マルドゥクと戦うことになります。彼女の体は天空と地球に引き裂かれ、その後、マルドゥクはティアマトの血から人間を創造し、世界の仕組みを作り上げていきます。この物語において、ティアマトの役割は混沌から秩序を生み出す重要な意味を持っています。

洗練された優しさと悲劇の結末

ティアマトのキャラクターは、異形や恐ろしい存在として描かれつつも、その内面には優しさと寛大さが見られます。彼女は、騒がしい新しい神々を非難することなく耐え、夫アプスーの計画が実行に移される際にはそれを止める試みをします。しかし、最終的に彼女は敗北し、悲劇的な結末を迎えます。それでも彼女は、神々を生み出した大いなる母神として、世界の基となる役割を果たすことによって、その行く末を見守る存在となったのです。

ティアマトが生んだ11の怪物たち

ティアマトは、神々との戦いのために11の怪物を創り出しました。これらの存在は神々を脅かし、果てしない闘争を引き起こしました。具体的には、7つ頭の大蛇ムシュマッヘや凶暴な竜ウシュムガルなどが知られています。こうした怪物たちは、後に処刑されたり神々の従者となったとされています。 __ティアマトの物語は、その壮大さと悲劇的な要素を併せ持ち、古代メソポタミア神話の中で特異な位置を占めています。__

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