トプカプ宮殿

トプカプ宮殿：オスマン帝国の栄華を今に伝える宮殿

トプカプ宮殿は、15世紀中頃から19世紀中頃までオスマン帝国の君主が居住した宮殿です。トルコ共和国のイスタンブール旧市街に位置し、ボスポラス海峡、マルマラ海、金角湾に囲まれた丘の上にあります。その歴史的価値と美しい建築様式から、多くの観光客が訪れる人気の観光スポットとなっています。

名称について

トルコ語の発音では「トプカプ・サライ」([ˈtopkapɯ saraˈjɯ])がより近いですが、日本語では「トプカピ宮殿」とも呼ばれます。「トプカプ」とは「大砲の門」という意味で、19世紀に皇帝がこの宮殿を離れた後、宮殿の丘の先端にあった門にちなんで名付けられました。

宮殿は当初、「新宮殿」（イェニ・サライ）や「帝王の宮殿」（サライ・ヒュマーユーン）と呼ばれていました。これは、以前からあった旧宮殿（ベヤズット広場にあった宮殿）に対する名称でした。

歴史

1453年にコンスタンティノープルを陥落させたメフメト2世が、1460年代頃から宮殿の造営を開始し、1478年頃に完成しました。メフメト2世が居を定めてからは、この宮殿は「新宮殿」と呼ばれるようになり、オスマン帝国の行政の中心地として機能しました。

宮殿内では、君主（のちには大宰相）が主催する御前会議（ディーワーヌ・ヒュマーユーン）が開かれ、帝国の重要な意思決定が行われました。また、宮殿には中央政府の書記局や国庫も置かれ、帝国の財政を支える役割も担っていました。

スレイマン1世の時代には、後宮（ハレム）が旧宮殿からトプカプ宮殿に移されました。ハレムの女性たちは、次第に政治へ介入するようになり、17世紀には君主の母后が政治を動かす「女人の天下」と呼ばれる時代を迎えました。

17世紀中頃に大宰相の執務所が大宰相府に移ると、宮殿は政治の中枢としての機能を失いましたが、その後も皇宮として、帝国の儀礼や公式行事の中心であり続けました。しかし、1853年に宮廷がドルマバフチェ宮殿に移ると、トプカプ宮殿は放置され、荒廃が進みました。

第一次世界大戦後、オスマン帝国が滅亡すると、1924年にトルコ共和国がトプカプ宮殿を博物館として公開し、修復を行いました。現在では、トルコを代表する観光地として、多くの人々が訪れています。

構造

トプカプ宮殿は、大きな建物が少なく、比較的小さな建物や部屋が連なる構造をしています。また、数多くの庭園や離れ（キョシュク）があるのが特徴です。この構造は、トルコ人の中央アジアの遊牧民的な伝統に基づいていると考えられています。

宮殿は、古代ビュザンティオンのアクロポリスがあった場所に建てられており、外壁内の総面積は約70万m2にも及びます。宮殿の正門は、アヤソフィアの側にある「帝王の門」（バーブ・ヒュマーユーン）です。

第一の庭

「帝王の門」をくぐると、「第一の中庭」と呼ばれる空間が広がります。ここは、オスマン帝国時代も現代も一般の人々が自由に出入りできる場所で、東ローマ帝国時代の遺構である聖イレーネ教会（アヤ・イリーニ教会）もあります。

第二の庭

「挨拶の門」（バービュッセーラム）をくぐると、「第二の庭」と呼ばれる公式行事に使われた広場があります。ここには、御前会議が開かれた「ドームの間」や、かつての国庫（現在は武具展示室）があります。

第三の庭

「幸福の門」（バービュッサーデ）の奥にある「謁見の間」（アルズ・オダス）を中心に、「第三の庭園」が広がります。ここには、君主の私室や宝物庫があり、「トプカプの短剣」などの貴重な品々が展示されています。

また、イスラム教の聖遺物である「ムハンマドのマント」や「ムハンマドの軍旗」も、この宮殿に保管されています。

後宮（ハレム）

後宮（ハレム）は、君主の母后、妃、子供たち、女官、宦官などが暮らした場所です。内部は複雑な構造をしており、多くの部屋や通路が迷路のように入り組んでいます。

世界遺産

トプカプ宮殿は、以下の理由により、ユネスコの世界遺産に登録されています。

人類の創造的才能を表現する傑作であること
建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すものであること
現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠であること
人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例であること

トプカプ宮殿は、オスマン帝国の歴史と文化を肌で感じられる貴重な場所です。イスタンブールを訪れる際には、ぜひ足を運んでみてください。

料金(2023年9月時点)

トルコ人:150リラ(年間パスは60リラ)
外国人:950リラ(ハレムを除外する場合は750リラ)

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