トマール

トマールの魅力と歴史

ポルトガルのサンタレン県に位置するトマールは、ナバオン川の中流に広がる魅力的な都市であり、ユネスコの世界遺産に指定されるキリスト教修道院やシナゴーグといった貴重な歴史遺産に恵まれています。また、4年ごとに開催されるタブレイロスの祭りも広く知られています。

歴史的な背景

トマールの歴史は古代ローマまで遡り、かつてはNabantiaやSelliumと呼ばれる都市が存在しました。ここはムーア人の征服を受けた後、レコンキスタにおいてその重要性を増し、1147年のサンタレンの戦いではポルトガル軍に貢献したことで、アフォンソ1世からテンプル騎士団へと授けられた土地となりました。

1160年には、キリスト教修道院の建設が始まり、テンプル騎士団の本部としてだけでなく、ムーア人に対抗する重要な拠点ともなりました。1190年にはムワッヒド朝に一度包囲されるも、騎士団はこれを退けました。1314年にはローマ教皇の命によりテンプル騎士団が活動停止となり、ディニス1世の下でキリスト騎士団が新たにトマールを統治することになりました。

エンリケ航海王子はこの騎士団の団長を務め、彼の指導のもと新しい航海を行う際には、その資源と知識が大いに利用されました。加えて、彼はナバオン川の治水計画を指示し、現在も残るトマールの市街地の基礎を築きました。

ユダヤ人と近代史

1492年以降、スペインでは異端審問が始まり、多くのユダヤ人がトマールに逃げ込みました。この移住によってトマールは新たな交易路を確保し、経済が活性化しました。特に現存するシナゴーグはその象徴的存在です。マヌエル1世の時代に、キリスト教修道院はルネサンス様式に改修され、さらなる繁栄を見せることとなります。

しかし、反宗教改革の影響でポルトガル国内に居住するユダヤ人に対し、キリスト教徒に改宗するよう求める詔が出され、多くが改宗を余儀なくされたり、警察に逮捕されたりしました。1581年にはスペインとポルトガルが同君連合を結成し、トマールもその影響下に置かれました。

産業と文化遺産

18世紀に入ると、トマールはポルトガルにおける最初の産業化が進んだ地域のひとつとなります。マリア1世の時代には、王室が支援した織物工場が設立され、水車を利用した製紙や鋳造、ガラス産業が発展しました。半島戦争の際にはフランス軍に占拠されましたが、後にイギリス軍によって解放されました。

文化的には、トマールには数多くの建造物があります。1983年にユネスコ世界遺産に登録されたキリスト教修道院や、13世紀に建設されたサンタ・マリア・ド・オリヴァル教会などがその例です。他にも存在するシナゴーグは、ポルトガルで最も良く保存されています。

経済活動

かつてトマールはポルトガルの工業・商業の中心地でしたが、現在では多くの工場が閉鎖し、観光業が主要な産業へと移行しました。観光以外にも製紙や木材加工、食品および陶磁器の製造が行われ、オリーブオイルやワインの生産も行われています。

祝祭

トマールでは3月1日が都市の祝日として祝われており、特にタブレイロス祭りは大変人気があります。この祭りは4年に1度、7月の上旬に開催される重要なイベントです。

トマールはその豊かな歴史と文化を持ち、現在でも多くの訪問者に愛される場所となっています。

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