トンコリ

トンコリの魅力と歴史

トンコリはアイヌ民族の伝統的な弦[[楽器]]であり、一般的には五弦の構造を持つため「五弦琴」とも呼ばれています。三弦や六弦のトンコリも存在しますが、非常に珍しく、ほとんどの資料では五弦のものが確認できます。この楽器は北海道の宗谷地方やオホーツク沿岸でも使用されていましたが、近代に伝承が途絶えたため、現在まで続く伝統は樺太アイヌに由来するものとなっています。

トンコリの構造

トンコリはギターとは異なり、胴体が細長く平坦な形状をしており、先端が尖っているのが特徴です。また、胴体には装飾が施されることがあり、アイヌの文化が色濃く反映されています。トンコリの各部位は、アイヌ民族の他の民具と同じく人間の体にたとえられます。たとえば、ギターヘッドやネックに相当する部分は「頭」や「首」と呼ばれる他、弦を巻く部位は「耳」、先端は「足」、弦の付け根は動物の毛皮で覆われ「陰毛」と表現されます。さらに、胴体の中心には「へそ」と呼ばれる穴があり、そこにはガラス玉が置かれ、これは「ラマトゥフ（魂）」と呼ばれています。

演奏時は、トンコリの特徴としてフレットがないため、弦を押さえることで音を変えるのではなく、開放弦の状態で演奏します。そのため、出せる音の数は基本的に弦の数に限定され、五音が主な構成音となります。調弦は樺太の東と西で異なることが知られています。

材料と製作

トンコリの製作には、エゾマツやホオノキが主に用いられ、弦には伝統的に動物の腱やイラクサの繊維が使われていました。現在では、三味線の弦を利用することが一般的です。

現代におけるトンコリ

1960年代、樺太アイヌの最後の伝承者から直接指導を受けた邦楽家、富田友子（歌萌）は、トンコリの演奏と講演に力を注いでおり、彼女が唯一、直接的な伝承を受けた演奏家とされています。彼女を通じてトンコリの技術は継承されており、彼女の弟子たち以外でも独自に復元した演奏や、他の音源からの学びを経て奏者が増えています。

1990年代に入ると、北海道や関東のアイヌ団体や個人による演奏が増加し、トンコリに触れる機会が増えました。中でも、OKIや小川基（TOYTOY）などの著名な奏者は積極的にトンコリの演奏を広めています。また、K.D earthという兄弟ユニットがトンコリを用いた創作活動を展開するなど、新たな試みも行われています。

さらには、札幌のプログレッシブ・ロックバンド「カムイ」はトンコリやムックリなどのアイヌ楽器を取り入れ、アイヌ民謡を引用した形でロックを演奏するなど、トンコリは現代の音楽シーンにも影響を与えています。

参考文献

以下は、トンコリに関する著作や資料の一部です。

• - 金谷栄二郎・宇田川洋『アイヌのトンコリ』
• - 萩中美枝・宇田川洋編『北海道東部に残る樺太アイヌ文化 (1)』
• - 谷本一之『アイヌ絵を聴く―変容の民族音楽誌』
• - アイヌ民族博物館編『西平ウメとトンコリ』
• - 富田友子『トンコリの世界』

以上がトンコリの概要と現代における重要性についての解説です。この楽器を通じて、アイヌ文化の深い魅力を感じることができるでしょう。

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