ドラクマ

ドラクマ：古代から近代ギリシャを支えた通貨

ドラクマは、古代ギリシャおよびヘレニズム世界で広く流通した通貨単位であり、近代ギリシャでもユーロ導入前まで使用されていました。語源はギリシャ語の「δράττω（ドゥラットー）」、つまり「つかむ」という意味で、手のひらに収まる程度の金属塊を指していたことに由来します。

古代ギリシャのドラクマ

紀元前11世紀以降、オボロスという通貨単位と共に使われ始め、紀元前5世紀にはアテネで鋳造された四ドラクマ銀貨が、ギリシャ世界で最も広く流通する硬貨となりました。この銀貨は、表面にアテナ女神、裏面にフクロウが描かれており、「グラウカイ」と呼ばれていました。その意匠は、現代のギリシャ1ユーロ硬貨にも受け継がれています。

アレクサンドロス大王の東征後は、中東諸国へも広がり、プトレマイオス朝エジプトなどでも使用されました。アラビア語のディルハムやアルメニアのドラムといった通貨単位も、ドラクマに由来していると言われています。ローマ帝国時代にも流通し、新約聖書にも登場するなど、広範囲、長期間にわたる使用が確認できます。1ドラクマの価値は時代によって変動しますが、紀元前5世紀の1ドラクマは1990年の25ドルに相当すると推定する研究もあります。また、ローマ帝国初期には労働者の一日の賃金に相当していたと言われています。なお、ドラクマは重量単位としても用いられており、約4.3グラムに相当します。

ドラクマの換算単位

6オボルス = 1ドラクマ
100ドラクマ = 1ミナ（ムナ）
60ミナ = 1アテネ・タレント

ミナとタレントは、実際の貨幣ではなく、金銀の量を表す計算上の単位でした。

近代・現代ギリシャのドラクマ

ギリシャ独立後、1832年にフェニックスに代わる通貨として復活。1868年にはラテン通貨連盟に加盟し、フランス・フランと等価とされました。しかし、第二次世界大戦中のナチス・ドイツ占領下ではハイパーインフレーションに見舞われ、価値を失いました。戦後、新ドラクマへの切り替えが行われましたが、その過程で何度もデノミネーションが行われ、通貨価値の変動は激しかったです。

1953年にはブレトン・ウッズ体制に参加、1954年には再び新ドラクマへの切り替えが行われ、1米ドル＝30新ドラクマという固定相場制を採用しました。しかし、1973年のブレトン・ウッズ体制崩壊後、ドラクマの価値は徐々に低下し、2000年には1米ドル＝約400ドラクマとなりました。

2001年1月1日、ギリシャはユーロ圏に加盟し、ドラクマは廃止されました。ユーロへの交換レートは1ユーロ＝340.75ドラクマとされました。硬貨の交換は2004年3月1日まで、紙幣は2012年3月1日まで認められていました。

ユーロ切り替え前のドラクマ紙幣

100ドラクマ：アテナ、アダム・アンティノス・コライス、アルカディ修道院
200ドラクマ：リガス・ヴェレスティンリス・フェレオス
500ドラクマ：イオアニス・カポディストリアス
1,000ドラクマ：アポロン
5,000ドラクマ：テオドロス・コロコトロニス
* 10,000ドラクマ：ゲオルギオス・パパニコロウ、アスクレピオス

ドラクマは、古代ギリシャ文明から近代ギリシャの歴史を語る上で重要な通貨単位であり、その変遷はギリシャ経済の変動を如実に反映しています。

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