ニホンウナギ

ニホンウナギ (Japanese Eel)

ニホンウナギ（Anguilla japonica）は、ウナギ目ウナギ科に属する魚類の一種で、日本を含む東アジア地域に広く分布しています。日本においては、古くから食用として親しまれており、特に夏の土用の丑の日に食べる習慣があります。

特徴

ニホンウナギは、成魚になると全長1メートルを超えることもあります。体は細長く、断面はほぼ円形で、表面は粘膜に覆われています。体色は、生息環境や成長段階によって変化し、河川生活期には黄褐色に見えることから「黄ウナギ」、海洋生活期には銀色に見えることから「銀ウナギ」と呼ばれることもあります。

夜行性で、日中は岩の隙間や砂の中に潜み、夜になると活発に動き出して、甲殻類、水生昆虫、小魚などを捕食します。また、皮膚呼吸も行うことができるため、体が濡れていれば陸上でも短時間であれば生存可能です。

生活史

ニホンウナギは、海洋で産卵し、孵化した稚魚はレプトケファルス（葉形幼生）と呼ばれる独特の形態をしています。レプトケファルスは、海流に乗って移動しながら成長し、シラスウナギと呼ばれる段階で日本の沿岸にたどり着きます。

シラスウナギは、川を遡上し、河川や湖沼で数年から十数年かけて成長します。成熟したウナギは、産卵のために再び海洋へと下り、マリアナ海嶺付近で産卵することが確認されています。産卵後の親ウナギがどうなるかは、まだ解明されていません。

近年、耳石の分析から、河川を遡上しない「海ウナギ」や、汽水域と淡水域を複数回行き来する「河口ウナギ」の存在も明らかになっています。

産卵場所の解明

ニホンウナギの産卵場所は、長らく謎に包まれていましたが、2006年に塚本勝巳博士らの研究チームによって、マリアナ海嶺のスルガ海山付近であることが突き止められました。この発見は、ニホンウナギの生態研究において非常に重要な進展でした。

保全状況

ニホンウナギは、生息地の環境変化や乱獲などにより、個体数が減少しており、国際自然保護連合（IUCN）によって絶滅危惧種に指定されています。日本では、環境省のレッドリストで絶滅危惧IB類に指定されています。

資源保護のため、東アジア地域での国際的な協力体制が構築され、養殖を目的とした稚魚の採捕量規制などが検討されています。しかし、密漁や違法な取引も依然として存在し、課題となっています。

養殖

ニホンウナギの養殖は、天然のシラスウナギを捕獲し、養殖池で育成する方法が一般的です。完全養殖の研究も進められていますが、まだ商業化には至っていません。養殖業を営むには、農林水産大臣の許可が必要です。

シラスウナギの漁獲量には変動があり、不足分は輸入で補っています。しかし、シラスウナギの密漁や密輸が横行し、資源の減少に拍車をかけています。

今後の課題

ニホンウナギの資源を保護し、持続可能な利用を実現するためには、以下の課題に取り組む必要があります。

密漁や違法取引の防止
生息環境の保全
完全養殖技術の確立
国際的な協力体制の強化

ニホンウナギは、日本の食文化において重要な存在であるとともに、生態系においても重要な役割を担っています。将来の世代にニホンウナギを残していくために、私たち一人ひとりが意識を高め、行動していくことが求められています。

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