バックギャモン

バックギャモン：古代から現代へ続く戦略的ボードゲーム

バックギャモンは、2人で行うボードゲームです。15個の駒をそれぞれ持ち、サイコロの出目を元に駒を進め、先に全ての駒をゴールに到達させることを目指します。世界最古のボードゲームの一つとされ、その歴史は古代エジプトにまで遡ります。西洋双六とも呼ばれ、日本にも飛鳥時代に伝来しましたが、賭博とみなされ禁止された時期もありました。

ゲームのルールと戦略

盤面と駒の配置

ゲーム盤は、1から24までの番号が振られた24個のポイントと、駒を一時的に置くバー、そしてゴールで構成されます。プレイヤーは、それぞれのポイントに駒を配置し、サイコロの出目によって駒を進めていきます。ゴールに近いポイントほど有利で、特に第5ポイントは「ゴールデンポイント」と呼ばれ、重要な戦略拠点となります。

駒の移動

プレイヤーは2つのサイコロを振り、出た目の数だけ駒を進めます。同じ駒を複数回動かすことも、異なる駒を動かすことも可能です。ゾロ目が出た場合は、その目の数の4倍の距離を駒を進めることができます。ただし、相手の駒が2つ以上あるポイントには移動できません（ブロック）。相手の駒が1つだけのポイント（ブロット）に移動すると、その駒をバーに移動させることができます（ヒット）。バーにある駒は、最優先で盤上に再配置する必要があります（エンター）。全ての移動先がブロックされている場合は、そのターンは駒を動かせません（ダンス）。特に、バーに駒があり、相手のゴールに近いポイントが全てブロックされている状態を「クローズアウト」といい、この状態ではサイコロを振ることもできません。

ゴールと得点

全ての駒をゴールに到達させることを「ベアリングオフ」と言います。ベアリングオフした駒はゲームから取り除かれます。ゲームの勝利によって得られる得点は、相手の駒のゴール状況によって異なります。

シングル: 相手がゴールし始めている状態での勝利(1点)
ギャモン: 相手がゴールしていない状態での勝利(2点)
バックギャモン: ギャモンに加え、相手の駒がバーまたはプレイヤー側のゴールに近いポイントに残っている場合(3点)

これらの基本得点に、後述する「ダブル」の倍率が適用されます。

ダブルとダブリングキューブ

プレイヤーは、自分のターン前にゲームの得点倍率を上げる「ダブル」を提案できます。相手がダブルを受け入れると、倍率が上がり、ゲームが続きます。拒否した場合、提案したプレイヤーが勝利します。ダブルは優勢なプレイヤーが提案することが多く、その判断は戦略に重要な要素となります。ダブリングキューブは、現在の倍率を表示するサイコロで、ダブルの提案権を示す役割も担います。

ダブルに関する変則ルール

クロフォードルール: どちらかのプレイヤーがマッチポイント（あと1点で勝利）になると、次のゲームではダブルが禁止されます。
オートマチックダブル: 最初のサイコロの出目が同じ場合、ダブルの倍率を2倍にして再試行します。
ビーバー: ダブルを提案されたプレイヤーは、さらに2倍の倍率で受け入れることができます。
ジャコビー: ダブルがかけられていない場合、ギャモン勝ちやバックギャモン勝ちも1点となります。

戦略と形勢判断

バックギャモンの戦略は多岐に渡り、状況に応じて柔軟に変化させる必要があります。代表的な戦略には、以下のものがあります。

プライミング: 連続したポイントをブロックし、相手の駒の進行を妨げる。
ブロッキング: 相手のゴールに近いポイントを確保し、ヒットを狙う。
アタッキング: 積極的にヒットを狙い、相手の動きを封じる。
バックゲーム: 不利な状況から逆転を狙う。
ランニング: 序盤から優勢を築き、安全に勝利を目指す。
* ギャモントライ/ギャモンセーブ: 勝利/敗北がほぼ確実な状況で、より有利な得点を目指したり、不利な得点を回避したりする戦略。

形勢判断には「ピップカウント」（駒のゴールからの距離の合計）が用いられますが、サイコロの要素が大きいため、チェスのような絶対的な優劣はつきにくいのが特徴です。

コンピュータとバックギャモン

バックギャモンは、コンピュータ科学の研究対象にもなっており、高度な人工知能が開発されています。これらのソフトウェアは、人間の世界チャンピオンを凌駕するほどに進化しています。有名なプログラムとしてはSnowie、GNU Backgammon、eXtreme Gammonなどがあります。

歴史

バックギャモンの歴史は古く、古代エジプトのセネト、ローマ帝国のドゥオデキム・スクリプタ、中世ヨーロッパのタブラなど、様々なゲームがその起源や発展に繋がっているとされています。中東ではナルドとして広がり、シルクロードを経由して中国や日本にも伝来しました。日本では「雙六」と呼ばれ、賭博として盛んに行われた時期もありましたが、その後衰退していきました。現代のバックギャモンは、16世紀のイギリスでbackgammonと命名され、18世紀には現代に近いルールが確立されました。20世紀にはダブリングキューブの導入によりゲーム性が向上し、世界中で再び人気を博すようになりました。

日本におけるバックギャモン

日本では戦後から競技人口が増加し、1974年には日本バックギャモン協会が設立されました。現在も、多くの競技者やプロが存在し、世界でも高いレベルで活躍しています。

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