ファインアート

ファインアートの概要

ファインアートとは、主に非実用的で芸術的な価値を重視する作品や活動を指す概念です。日本語の「芸術」とほぼ同じ意味を持ちますが、特に応用芸術や大衆芸術とは明確に区別されることが多いです。この用語は、特に美術の分野で使われることが一般的で、純粋な美術と呼ばれるものが、応用美術に対して強調されることもあります。

ファインアートは、ハイカルチャーの一部を成し、時にはハイアートとも呼ばれます。ハイアートは、大衆芸術と対比され、ファインアートとほぼ同じ意味で使われることが多いです。1891年のブリタニカ百科事典第11版では、ファインアートの五大領域として、建築、彫刻、絵画、音楽、詩（Poetry）が挙げられ、ダンスや演劇が補助的な領域とされています。

ファインアートの成立背景

ファインアートの概念が確立されたのは、18世紀後半のヨーロッパにおいてです。この頃、芸術が持つ価値だけでなく、実用的な価値を重視する応用芸術や、娯楽としての大衆芸術と明確に区別されるようになりました。具体的には、当時の視覚芸術は、建築物や家具、食器、衣服を装飾するものでした。しかし、壁画が絵画やタブローとなり、彫刻も独自の作品として独立して制作されるに至り、美術としてのジャンルが発展しました。この進化には新たな技術の発明や、芸術作品が商品として取引される社会経済状況が影響しています。特に装飾性が独自の芸術性へと昇華され、作家独自の創造性が重視されるようになったからです。

フランス王立絵画彫刻アカデミーが1648年に設立され、その後、音楽アカデミーや建築アカデミーが続々と創設されました。1816年にはこれらが統合され、フランス芸術アカデミーが成立しました。このような歴史を通じて、西洋のファインアートの概念が体系化されていきました。

ハイカルチャーとの関係

ファインアートは、ハイカルチャーの一部として位置づけられます。ハイカルチャーとは、大衆文化やポップカルチャーと対立する概念です。音楽の分野では、クラシック[[音楽]]がハイカルチャーに該当し、対してポピュラー[[音楽]]や民族[[音楽]]は大衆芸術とされています。オペラはクラシック[[音楽]]を基盤にしているためハイカルチャーに含まれますが、ミュージカルはポピュラー[[音楽]]を使用しています。

20世紀以降のファインアート

20世紀には、社会の変革を背景にしてダダイスムの運動が登場します。これは、反芸術とも称され、マルセル・デュシャンが偽名で男性用小便器を展示した『泉』が有名な例です。また、ジョン・ケージによる無音の楽曲『4分33秒』も、ダダイスムと呼ばれる流れの中にあります。

アメリカでは、経済の繁栄に伴い、大衆文化が急速に発展し、新たにポップアートが登場します。ジャスパー・ジョーンズが描いた星条旗や、ロイ・リキテンスタインの漫画を基にした作品など、当時のアートシーンに大きな影響を与えました。加えて、アンディー・ウォーホルは、シルクスクリーンを使用して著名人の作品を制作し、アートの民衆化を進めました。

現代においては、版画や写真、映像（動画）もファインアートの一部と考えられています。加えて、美術館の選択肢も広がり、工業デザインを扱うケースも増えてきました。1864年設立のオーストリア王立美術工業博物館は、その後ファインアートと応用美術を共に扱うMAKとして再編成されました。

日本におけるファインアートの受容

日本には、開国後の明治時代に西洋文化が一斉に流入しました。リベラル・アートが西周によって「芸術」と翻訳され、1873年には「美術」という概念が導入されました。この時期には、ファインアートの翻訳が進行し、「芸術」に関する用語が整備されていきました。しかし、当時の日本の文化や美術の特性を考慮すると、ファインアートの定義に厳密には当てはまらない作品も多くありました。特に、伝統的な日本絵画は、装飾的な役割を果たすものが多く、必ずしもファインアートに分類されるべきものではありませんでした。そのため、美術と工芸が日本ではしばしば一緒に扱われる傾向があります。

結論

ファインアートは、芸術的価値を重視した活動や作品を意味し、近代以降、特定の地位を確保しています。時代や社会の変化に応じて、その形態や理解も変化し続けています。日本においても、西洋文化の影響が色濃く反映された形で受容され、特殊な経済的文化を形成しています。

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