フウセンウナギ

フウセンウナギ（風船鰻）について

フウセンウナギ（風船鰻）は、Saccopharynx schmidtiという学名で知られる魚で、フウセンウナギ目の中のフウセンウナギ科に属しています。このフウセンウナギ科は、フウセンウナギ属（Saccopharynx）という単一の属のみから成り、その中に11種が分類されています。フウセンウナギという名前は、ラテン語の「Saccus」（袋）とギリシャ語の「pharynx」（のど）から由来し、袋状に膨らんだ特徴的な喉を指しています。

フウセンウナギの標準和名が初めて提案されたのは1963年で、京都大学の魚類学者松原喜代松の著作によります。それ以前は、この魚は属名に基づいて「サッコファリンクス」と呼ばれていました。この際、フウセンウナギ目、フウセンウナギ科、フウセンウナギ属という新たな名称も提唱され、それに従って以降の研究や分類が行われています。

生息地と形態

フウセンウナギは、大西洋、インド洋、太平洋の水深2000メートルから4000メートルに生息しており、深海魚として知られています。全長は一般に60cmから160cm程度であり、黒っぽい色調をしています。また特徴的な大きな口を持ち、口内には多くの小さな歯が並んでいます。尾の先端にある発光器も、他の魚との識別に役立つ特徴の一つとされています。

この魚類は、接続骨、鰓蓋骨、鰓条骨、鱗、肋骨、幽門垂、うきぶくろ（浮袋）などの構造を持たず、そのため一時期は硬骨魚類に分類されていないと考えられていたこともありました。また、ウナギ目に類似したレプトケファルス幼生段階を経て成長することも、彼らの生態的特徴の一部です。

分類と親緣関係

2000年代初頭に行われたミトコンドリアDNAの解析によると、フウセンウナギ科及び他のフウセンウナギ目の魚類は、ウナギ目の中で系統的に分岐し、特にシギウナギ科、ノコバウナギ科、ウナギ科とは近縁であることが示されました。このことにより、フウセンウナギの進化の過程にも新たな視点が加えられています。以下は、フウセンウナギ科に所属する主な種です。

フウセンウナギ科の主な種

• - Saccopharynx ampullaceus (Harwood, 1827) - Gulper eel
• - Saccopharynx berteli Tighe & Nielsen, 2000
• - Saccopharynx flagellum Cuvier, 1829
• - Saccopharynx harrisoni Beebe, 1932
• - Saccopharynx hjorti Bertin, 1938
• - Saccopharynx lavenbergi Nielsen & Bertelsen, 1985
• - Saccopharynx paucovertebratis Nielsen & Bertelsen, 1985
• - Saccopharynx ramosus Nielsen & Bertelsen, 1985
• - Saccopharynx schmidti Bertin, 1934 - フウセンウナギ (Whiptail Gulper)
• - Saccopharynx thalassa Nielsen & Bertelsen, 1985
• - Saccopharynx trilobatus Nielsen & Bertelsen, 1985

このように、フウセンウナギは独特な生態と形態を持つ魚であり、深海を象徴する存在です。彼らの研究は、進化や生態系の理解を深めるうえで重要な役割を果たしています。

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