フロド・バギンズ

フロド・バギンズ：指輪を託されたホビット

フロド・バギンズ（Frodo Baggins）は、J・R・R・トールキンが創造した中つ国を舞台とする物語『指輪物語』に登場する、心優しくも勇敢なホビットです。第三紀の2968年9月22日に生まれた彼は、物語の中心人物として、一つの指輪を滅ぼすという重大な使命を担います。

生い立ちと養子縁組

フロドは、ドロゴ・バギンズとプリムラ・ブランディバックの間に生まれました。しかし、2980年に両親がボート事故で亡くなると、12歳という若さで母方のブランディバック家に引き取られます。その後、2989年にビルボ・バギンズが彼の保護者となり、フロドはビルボを「おじ」と呼び慕いますが、実際にはいとこの子にあたります。ビルボには子供がいなかったため、フロドを後継ぎとして迎え、共に袋小路屋敷で暮らすことになります。

フロドとビルボは9月22日という同じ誕生日を迎え、ビルボはフロドより78歳年上でした。『指輪物語』の冒頭では、3001年9月22日にフロドは33歳、ビルボは111歳の誕生日を盛大に祝っています。

指輪の継承と旅立ち

盛大な誕生祝いの後、ビルボは裂け谷へと旅立ち、彼が所有していた魔法の指輪はフロドに託されます。ガンダルフはフロドに対し、指輪を決して使用せず、その存在を秘密にするよう警告します（この時点では、ガンダルフ自身も指輪が力の指輪であると確信していたわけではありません）。フロドは17年間、指輪の力を借りることなく、成人した時と変わらぬ若さを保ちながら、その秘密を守り続けます。

3018年、ガンダルフは再びフロドのもとを訪れ、指輪がまさしく「一つの指輪」であることを確認します。ガンダルフはフロドを、忠実な友人であり庭師でもあるサムワイズ・ギャムジーとともに旅立たせます。ペレグリン・トゥックとメリアドク・ブランディバックも彼らに加わり、さらにブリー村では馳夫（後のアラゴルン）が一行に合流し、裂け谷を目指します。

旅の途中、フロドはナズグールの首領であるアングマールの魔王にモルグルの短剣で肩を刺され、瀕死の重傷を負います。しかし、裂け谷の貴族グロールフィンデルの助けによって救出され、裂け谷でエルロンドの治療を受けます。エルロンドの会議において、一つの指輪を滅びの山の滅びの罅裂に投げ込み破壊するべきであるという決定が下され、フロドを守るために9人の指輪の仲間が結成されます。

指輪の仲間とモルドールへの苦難の道

指輪の仲間はモルドールを目指しますが、モリアでのバルログとの戦いでガンダルフを失い、ネン・ヒソエルの湖畔ではボロミアが指輪の力に魅入られてしまいます。さらに、アイゼンガルドのオークの襲撃を受け、一行は離散してしまいます。その後、フロドはサムと二人で旅を続け、エミン・ムイルの岩山でかつての指輪の所持者であったゴクリと出会い、従者とします。エミン・ムイル、死者の沼地を越え、モルドールの正門である黒門を避けて、ゴクリの案内でキリス・ウンゴルの階段を通り、魔の山へと向かいます。

キリス・ウンゴルの主である巨大な蜘蛛シェロブに襲われ、毒針で刺されて仮死状態に陥りますが、サムの勇敢な活躍によって救出され、モルドール深部へと潜入します。数々の苦難を乗り越え、ついに滅びの山オロドルインにたどり着きますが、最後の最後で指輪の誘惑に屈してしまいます。しかし、「意外な者の助け」によって使命を果たし、冥王サウロンを滅ぼすことに成功。その後、フロドはホビット庄へと帰還します。

ホビット庄の解放と旅立ち

帰還後、フロドはホビット庄の平和を取り戻すために水の辺村の戦いに参加しますが、剣を抜くことはなく、ホビット庄の住人たちの無益な殺戮を止めます。

指輪を滅ぼす旅から帰還して2年が過ぎても、指輪戦争で受けた傷は癒えることはなく、安寧な日々を送ることができません。指輪の所持者であったフロドとビルボは、ヴァリノールへ旅立つ許可を得ます。3021年9月29日、フロドはサム、メリー、ピピンに見送られ、ガンダルフ、エルロンド、ガラドリエルらと共に、エルフの白い船で灰色港から西方へと旅立ちます。

フロドには子供がおらず、彼の財産は赤表紙本と共にサムワイズ・ギャムジーに託されました。

名前について

『指輪物語』は、劇中の言語である西方語から英語に翻訳されたという設定であり、フロド・バギンズという名前も、マウラ・ラビンギ（Maura Labingi）という西方語の名前を英語に翻訳したものです。Mauraには「賢き者」という意味が含まれているため、トールキンは同じ意味を持つゲルマン語の要素frod-を当てました。シンダール語では、フロドの名前はヨラエル（Iorhael 賢き老人）となります。

映画におけるフロド

ピーター・ジャクソン監督による映画『ロード・オブ・ザ・リング』では、アメリカ人俳優のイライジャ・ウッドがフロドを演じ、その演技は世界中の観客を魅了しました。また、以前のBBCラジオ版では、イギリス人俳優のイアン・ホルムがフロドを演じており、映画版ではフロドの養父であるビルボを演じるという縁もありました。

バギンズ家略図

（バギンズ家の家系図に関する情報があれば追記）

その他の情報

映画『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔|ロード・オブ・ザ・リング_二つの塔』では、一つの指輪に魂を蝕まれ、完全に支配されてしまった未来のフロドが描かれる予定でしたが、撮影されたシーンは最終的にカットされました。このゴラム化したフロドは、Gollum-Frodoと呼ばれています。

フロド・バギンズは、勇気と慈悲の心を持つホビットとして、中つ国の歴史に名を刻み、多くの人々に感動を与え続けています。

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