ブリャンスク

ロシアの工業都市、ブリャンスク：歴史と文化の交差する地

ブリャンスクは、ロシア連邦ブリャンスク州の州都であり、人口約37万人（2021年）を擁する都市です。モスクワから南西へ約380kmの位置にあり、西はベラルーシ、南はウクライナと国境を接する戦略的に重要な地域に立地しています。デスナ川とその支流ボルバ川の合流地点近くに位置し、古くから交通の要衝として発展してきました。

歴史：モンゴル侵入から現代まで

ブリャンスクの歴史は古く、10世紀頃からデスナ川右岸に要塞が築かれていたと推測されています。史料上では1146年に「ディブリャンスク」という名称で初めて登場し、チェルニゴフ公国の最北の都市として栄えました。しかし、13世紀にはモンゴル帝国の侵攻を受け、大きな被害を被ります。チェルニゴフ公は一時ブリャンスクに遷都しましたが、その後スモレンスク公国、リトアニア大公国などの支配下に置かれ、幾度も領土争奪の舞台となりました。

16世紀初頭、モスクワ大公国がブリャンスクを征服し、以降はロシア・ツァーリ国、ロシア帝国へとその支配が受け継がれていきます。17世紀初頭の大動乱においても、要塞都市として重要な役割を果たしました。ピョートル1世の時代にはキエフ県、エカチェリーナ2世の時代にはオリョール県に編入され、1779年には市として認められ、紋章が与えられました。

17～18世紀には、交通の要衝である地理的優位性を活かし、交易拠点として発展を遂げます。近郊のスヴェンスキー修道院では大規模な定期市が開かれ、ロシア西部最大の市場として知られました。また、地下資源にも恵まれ、1783年にはロシア海軍の大砲と弾薬の生産拠点が置かれ、冶金工業と繊維業の中心地へと変貌を遂げます。19世紀には本格的な工業化が進み、蒸気機関車や客車の生産が盛んに行われるようになりました。

1917年には人口が3万人を超えましたが、1918年にはベラルーシ人民共和国が領有を宣言するも、1919年にはボリシェヴィキによって占領されます。第二次世界大戦では1941年10月にドイツ軍に占領され、激戦地となり、市街地は壊滅的な被害を受けました。しかし、ブリャンスク周辺では6万人以上のロシア人がパルチザンとして抵抗し、ドイツ軍を苦しめました。1943年9月17日にソ連軍によって解放され、1944年には新設されたブリャンスク州の州都となりました。1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故では、放射能の影響を受けました。

経済と交通：鉄鋼業の中心地

現代のブリャンスクは、鉄鋼業や金属工業の中心地として知られています。大規模な工場が多数立地し、列車、貨車、機関車などの生産が主要産業となっています。また、2つの大学が存在し、劇場などの文化施設も充実しており、ブリャンスク州の文化・教育の中心としての役割も担っています。市内にはトロリーバスなどの公共交通機関も整備されています。

周辺都市と姉妹都市

ブリャンスクの北には工業地区であるベジツァ区があり、他にもフォーキノ、セリツォなどの都市が近郊に位置しています。ブリャンスクは、ロシア国内のオリョール、セヴェロドヴィンスク、オムスク、イジェフスク、ベラルーシのホメリ、マヒリョウ、ウクライナのチェルニーヒウ、ポーランド、ブルガリア、リトアニア、ラトビア、ハンガリーなど、多くの都市と姉妹都市関係を結んでいます。

文化と人物

ブリャンスクは、構成主義の彫刻家ナウム・ガボ、宇宙飛行士ヴィクトル・アファナシェフ、総合格闘家ヴィタリー・ミナコフなど、多くの著名人を輩出しています。

ブリャンスクは、歴史と産業が深く融合した都市であり、その発展はロシアの歴史と密接に結びついています。今後も、鉄鋼業を中心とした経済発展と、豊かな歴史・文化を活かした都市発展が期待されます。

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