フランジ

フランジ：多様な用途と構造

フランジは、円筒状または板状の部材から突出する、つば状の部分を指す一般的な名称です。配管、軸継手、車輪、構造部材など、実に様々な分野で用いられていますが、それぞれの用途によって形状や機能は大きく異なります。一見すると同一の形状に見えても、その設計思想や役割は分野によって大きく異なることを理解することが重要です。

1. 管継手としてのフランジ

配管において、フランジはパイプや弁などの部品を接続する継手として広く利用されています。円盤状または円盤と円筒を組み合わせた形状をしており、パイプにフランジを溶接するか、ねじ込み、ボルトなどで締結することで、パイプ同士を堅牢に接続します。

細いパイプではねじ込み接続や接着剤が一般的ですが、弁などの部品の追加・交換、または流体の循環系ではフランジ接続が有効です。フランジ接続は、ねじ込み接続や接着剤接続に比べて、部品交換が容易で、複雑な配管システムにも対応できます。特に、太いパイプや高圧の流体を取り扱う配管システムでは、フランジ接続が不可欠です。フランジとフランジの間にはガスケットやOリングを挿入し、漏洩を防ぎます。

フランジ継手の種類としては、パイプとフランジを溶接する溶接フランジと、パイプ端にねじを切りフランジの雌ねじにねじ込むねじ込みフランジがあります。溶接フランジは高い気密性が必要な場合に、ねじ込みフランジは保守・メンテナンスが容易な場合に適しています。流体の種類や圧力、温度、腐食性などに応じて適切なフランジとボルトを選択する必要があります。

自動車の吸排気系などでは、量産性を考慮してフランジ接続が広く用いられています。

2. 軸継手としてのフランジ

回転する2つの軸を連結し、回転運動を伝える機構を軸継手と言います。フランジは、固定軸継手と可動軸継手の両方で使用されます。固定軸継手では、軸にフランジを圧入しキーで固定、ボルトで締結します。可動軸継手では、フランジ間にゴムや皮などの弾性体を挟み込み、軸のたわみを許容する構造にします。

3. 車輪のフランジ

車輪にもフランジは存在し、その役割は用途によって異なります。

ハブフランジ: スポーク車輪において、スポークを取り付けるためのハブからの突出部
リムフランジ: タイヤとリムを嵌合させるためのリム端部の突出部。規格が厳密に定められています。
* 鉄道車両のフランジ: 脱線防止のための車輪側面の突出部。分岐器での進路転換にも関与します。片側フランジ、両側フランジ、フランジ無しの車輪など、用途に応じて様々なタイプがあります。歴史的には、レール側にフランジが設けられていた時代もありました。

4. はり部材におけるフランジ

はり部材では、断面二次モーメントを増大させ曲げ剛性を向上させるために、上縁または下縁に板状の部材（フランジ）を設けます。I形鋼やプレートガーダーなど、多くの構造部材でこのフランジが用いられます。フランジは主に曲げモーメントに、ウェブはせん断力に抵抗します。歴史的には、ブルネルが鋳鉄技術の発展途上において錬鉄を用いた湾曲フランジを採用した例もあります。

5. ストーマ用装具におけるフランジ

ストーマ用装具は、人工膀胱や人工肛門を造設した際の排泄物貯留用装具です。フランジは、装具をお腹に貼り付ける部分です。ワンピースタイプとツーピースタイプがあり、それぞれフランジとパウチ（貯留部）が一体型、または分離型です。

6. オランウータンのフランジ

オランウータンの雄の顔周りの膨らみもフランジと呼ばれます。これは脂肪やコラーゲンからなり、優位な雄に発達します。喧嘩に負けた雄はフランジが退化し、新しい優位な雄が新たなフランジを形成します。

このように、「フランジ」という名称は、様々な分野で用いられており、その形状や機能は用途によって大きく異なります。しかし、いずれも共通して「つば状の突出部」という形状的特徴を有している点が注目されます。それぞれの分野におけるフランジの設計・選定には、専門的な知識と経験が求められます。

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