ベアトラップ

ベアトラップ：艦載ヘリコプター用着艦拘束装置

ベアトラップ（英語: beartrap）は、艦載ヘリコプターが荒れた海 Conditions下でも安全に着艦できるように開発された拘束装置です。正式名称はHHRSD（Helicopter Hauldown and Rapid Securing Device）で、カナダで開発されました。

開発の経緯

カナダ海軍は、航空母艦の退役に伴う航空戦力低下を補うため、ヘリコプターの艦載運用に着目しました。1956年から小型艦艇での運用を想定した着艦拘束装置の開発に着手し、フリゲート艦「バッキンガム」でホワールウィンドHO4Sの運用試験に成功しました。

その後、改良が重ねられ、1960年には基本的なシステム構想が確立。フェアリー・カナダ社が設計・試作を担当しました。1963年には駆逐艦「アシニボイン」に搭載され、シーキングによる初の着艦試験が実施されました。これらの試験結果を踏まえ、1967年に駆逐艦「ニピゴン」にバックフィットされ、実用艦として運用が開始されました。

設計

ベアトラップシステムは、ヘリコプターの機体下面に設置されたプローブと、艦の飛行甲板上に設置されたRSD（Rapid Securing Device）およびその移動軌道で構成されています。これにより、悪天候時でもヘリコプターを安全に着艦させ、格納庫と飛行甲板間を移動させることが可能です。

シーキングには尾輪があり、艦の動揺による尾輪のずれを防ぐためのリテーニング・レールも設置されました。

着艦の仕組み

1. プローブからメッセンジャー・ワイヤーが繰り出されます。
2. 作業員が、RSDから繰り出されるリカバリー・アシスト・ケーブルとメッセンジャーワイヤーを連結します。
3. パイロットは、合図を受けてワイヤーを巻き上げ、ケーブルを機体側に引き上げます。
4. ケーブルが機体と連結されると、LSO（Landing Signal Officer：着艦管制士官）の操作により、RSD内のウィンチでケーブルが巻き取られます。
5. まず約900kgの張力で機体をRSD直上に引き寄せ、動揺が少ないタイミングで張力を1,800kgに増大させ、機体を甲板上に引き下ろします。
6. 機体が着艦すると、プローブがRSDの四角い開口部に挿入され、両側から挟み込まれて固定されます。

この着艦方法は、海上自衛隊ではテザード・ランディング、アメリカ海軍ではリカバリー・アシスト・ランディングと呼ばれます。

海況が良好な場合や、機体または艦のケーブル装置が故障した場合は、パイロットが直接プローブをRSDに挿入する方法（アンテザード・ランディング/テザード・ランディング）も用いられます。

RSDの開口部は約0.9メートル四方で、厳しい運用環境でもプローブを挿入できるように設計されています。アメリカ海軍のHSL-41での実用結果では、熟練パイロットでもRSD開口部にプローブを正確に挿入できるのは3回中2回程度とされています。

各国での採用

ベアトラップはカナダ海軍で標準装備となったほか、海上自衛隊も採用しました。海上自衛隊では、輸送艦「しれとこ」で運用試験を実施後、はるな型[[護衛艦]]から装備化されました。

アメリカ海軍も、LAMPS Mk.IIIにおいて各種着艦拘束装置を比較検討した結果、ベアトラップの採用を決定しました。ただし、シーホークはシーキングよりも最低地上高が低いため、RSDを薄型に変更するなどの設計変更が行われ、RAST（Recovery Assist, Secure and Traverse）システムと称されています。

海上自衛隊も、SH-60Jの採用に伴い、あさぎり型[[護衛艦]]以降で日本版RASTであるRAST-Jを導入しました。既存のベアトラップ搭載艦もRAST-Jに換装され、HSS-2BもRAST-Jに対応できるようメイン・プローブが改造されました。

もう一度検索