ベンダーロックイン

ベンダーロックインとは

ベンダーロックインとは、特定のベンダー（メーカー）の独自技術に大きく依存した製品、サービス、システムなどを採用した結果、他のベンダーが提供する同種の製品、サービス、システムなどへの乗り換えが困難になる状態を指します。この状況に陥ると、製品やサービスの選択肢が狭まり、価格が高騰してもユーザーはそれを受け入れざるを得なくなるため、コストが増大する傾向があります。また、市場競争や技術革新の恩恵を十分に受けられない可能性も生じます。

ベンダーロックインの具体的な例

ベンダーロックインは、様々な分野で見られます。以下に具体的な例を挙げます。

コンピュータシステム:
情報システムの開発を曖昧な仕様で特定のベンダーに発注した場合、システムの詳細な仕様がそのベンダーしか理解できなくなることがあります。その結果、システムの保守、拡張、改修の際に、そのベンダーに発注し続けざるを得なくなります。
Microsoft WindowsやMicrosoft Officeのように、市場で圧倒的なシェアを持つソフトウェアもベンダーロックインの一例です。多くのアプリケーションがWindows向けに開発されており、Office製品で作成されたファイルは、同じソフトウェアがないと開けないため、ユーザーは特定のソフトウェアに依存せざるを得ない状況です。かつては、Lotus 1-2-3や一太郎も同様の状況でした。
ウェブブラウザのInternet Explorer（IE）も、かつて企業や官公庁で標準環境として利用されていました。しかし、IEでしか動作しないウェブサイトや社内システムが多数存在し、IEのサポート終了に伴う環境移行が困難になっています。これはベンダーロックインの負債とも言えます。
オペレーティング[[システム]]（OS）:
特定のOS向けに開発されたネイティブアプリケーションは、原則としてそのOS上でしか動作しません。異なるOSへの移植は可能ですが、OS固有の機能を利用している場合、移植が困難になることがあります。また、セキュリティポリシーでサードパーティーによる利用が禁止されている機能を利用している場合も、移植はできません。
MicrosoftのDirectXやActiveX、NVIDIAのCUDAなども同様に、特定の環境下でしか利用できないため、ベンダーロックインを引き起こします。
ハードウェア:
Apple社のLightningケーブルやコネクタは、USB Type-Cとの互換性がなく、同社が認定した製品しか使用できません。ケーブルやコネクタには暗号化されたチップが組み込まれており、非認定品の使用を制限する仕組みがあります。
Apple社のMetal APIも同様に、特定の環境への依存を強め、他のプラットフォームへの移行を困難にしています。
クラウドプラットフォーム:
Amazon Web ServicesやGoogle Cloud Platformなど、OSが公開されていないクラウドプラットフォームのAPIを利用してシステムを構築すると、他のプラットフォームへの切り替えが難しくなります。これはクラウドロックインと呼ばれる現象です。Microsoft AzureもMicrosoft製品への依存があり、クラウドロックインとは異なるものの、マイクロソフト社へのロックインが存在します。
その他:
日本の自治体では、戸籍を電子化する際に、別々のメーカーに依頼した結果、同じ文字でも異なる文字コードが割り当てられ、ベンダーの乗り換えが困難になりました。現在はMJ文字への移行が進められています。
カクテル「バカルディ」で使用するホワイトラムは、バカルディ社製のみと指定されています。これは登録商標によるロックインです。
リヒャルト・ワーグナーの楽譜では、シンバルはジルジャン社製を使用するよう指示されています。これは上位の仕様書で特定の下位の仕様を記載することによるロックインの一例です。

ベンダーロックインへの対策

ベンダーロックインを防ぐための対策として、以下の方法が挙げられます。

自社・自組織での内製:
システムやソフトウェアを自社で開発することで、特定のベンダーへの依存を避けることができます。しかし、内製にはコストや専門知識が必要になるという課題もあります。
国際標準規格に基づく汎用品の利用:
国際標準規格に基づいて作られた汎用品を使用することで、特定のベンダーに依存することなく、製品やサービスを選択することができます。しかし、汎用品では十分な機能や性能を得られない場合もあります。

ベンダーロックインは、長期的に見るとコスト増大や技術革新の妨げになる可能性があります。そのため、システムやサービスの導入時には、将来的なリスクを考慮し、慎重に選択を行うことが重要です。

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