ミヤマオウム

ミヤマオウム：知性と適応性の高いニュージーランド固有種

ミヤマオウム（学名： Nestor notabilis）は、ニュージーランド南島にのみ生息するオウムの一種です。マオリ語ではケア（Kea）と呼ばれ、その知能の高さから「世界一賢い鳥」とも称されています。全長約46cm、体重700～1000gで、全身はオリーブグリーンの羽毛で覆われ、翼の下側は赤みを帯びています。頭部から腹部にかけては灰色がかった羽毛を持ち、くちばしと目は濃い灰色をしています。幼鳥はくちばしや目の周りが黄色いのが特徴です。

ミヤマオウムは、カカ、絶滅したキムネカカ（ノーフォーク島カカ）とともにミヤマオウム属に分類され、フクロウオウム科に属します。分子系統学的研究によると、これらの3種は共通の祖先から約1500万年前に分岐したと考えられています。フクロウオウム（カカポ）がミヤマオウムの最も近い近縁種とされています。

ミヤマオウムは高山帯の森林や草原に生息し、その鳴き声は「キーアー」と聞こえることから、別名「深山鸚鵡」と呼ばれています。雑食性で、植物の葉や花、蜜、果実、昆虫などを食べますが、驚くべきことに、他の鳥の雛も捕食します。特に、穴居性の海鳥の雛を襲う際には、鋭いくちばしを使って巣穴を掘り広げ、雛を捕らえて食べることが知られています。

ミヤマオウムの最も顕著な特徴は、その高い知能と適応能力です。彼らは非常に好奇心旺盛で、学習能力も高く、複雑な問題解決能力も持ち合わせています。ゴミ箱の蓋を開けたり、ボルトやナットを外したり、自転車のタイヤに噛み付いてパンクさせたりといった、人間社会の道具や構造物を巧みに利用する事例が数多く報告されています。集団で協力して行動し、様々な「いたずら」を働くことも知られています。こうした行動は、食物が限られた高山環境への適応と考えられています。

人間との関係においては、かつては羊を襲う被害が問題となり、多くのミヤマオウムが駆除されました。入植者による植生の破壊と羊の放牧が、ミヤマオウムの食性を変え、羊を襲う行動を引き起こした要因の一つと考えられています。絶滅の危機に瀕したため、1986年以降は保護されています。近年では、スキー場周辺のゴミからパンやファーストフードなどの残飯を漁ったり、スキー場のロッジで飲酒するミヤマオウムの姿が目撃されています。冬期には、高カロリーな食物を容易に得られるスキー場近辺に営巣する個体も現れています。

ミヤマオウムは、その高い知性と驚異的な適応能力、そして人間社会との複雑な関わりを通して、私たちに多くの示唆を与えてくれる存在です。彼らの生態の解明と保全は、生物多様性の維持という観点からも非常に重要です。

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