ムーンライトシンドローム

『ムーンライトシンドローム』は、1997年にヒューマンから発売されたPlayStation用ゲームソフトです。前作『トワイライトシンドローム』の続編的な位置づけであり、一部設定や登場人物は共通していますが、舞台となる地名表記が異なるなど、パラレルワールドとして解釈できる要素も含まれています。

概要

前作『トワイライトシンドローム』が怪談的なホラー要素が強かったのに対し、本作は人間の深層心理に潜む狂気をテーマとしたサイコホラー作品となっています。恐怖の対象は霊的な現象から、より身近な人間の狂気にシフトしており、偏執的な登場人物や難解な会話、意図的に曖昧にされたストーリー描写が、プレイヤーに強い不安感を与えます。

ゲームシステムとしては、横スクロール形式のアドベンチャーゲームで、会話やビジュアルカット、ムービーなどを通して物語が展開されます。選択肢は存在するものの、ストーリーが分岐することはなく、一本道の展開となります。主人公は前作の長谷川ユカリから、後輩の岸井ミカへとバトンタッチされ、「岸井さん、岸井さん」という印象的な台詞から物語が始まります。

本作は、その難解さから「電波系」と呼ばれることもあり、ストーリーの解釈が難しいと感じるプレイヤーも少なくありません。また、前作の実写取り込みから、モーションキャプチャーへと表現方法が変更されています。

裏設定として、ゾロアスター教の神話が用いられており、物語に深みを与えています。設定資料によれば、白髪の少年は契約の神ミトラをモチーフにしているとされています。

あらすじ

物語の舞台は、都市開発が進み、昔ながらの姿を失いつつある雛代町。主人公の岸井ミカが通う雛代高校も、進学校化が進み、近代的な校舎へと変わりつつあります。そんな変化の中で、ミカは町に不穏な気配を感じ始めます。ストーカー被害に悩まされるなど、彼女の身の回りでは不可解な出来事が起こり始め、狂気が徐々にミカを蝕んでいきます。

主なエピソード

プロローグ PROLOGUE: ミカはストーカーの気配を感じる中、作家のアラマタと出会い、過去の心霊現象との繋がりを知らされます。
夢題 MOWDAI: 華山キョウコの死を巡り、リョウがクラブで出会った少女たちとの間で物語が展開します。
奏遇 SOWGUW: ラクロス部の練習後、ミカは部室で奇妙な体験をし、白髪の少年と出会います。
変嫉 HENSHITSU: ショッピングに出かけたミカは、逸島チサトの妹ヤヨイと出会い、奇妙な出来事に巻き込まれます。
片倫 HENLIN: 校舎内で白髪の少年を見かけたミカは、校舎の異変に気付きます。
浮誘 FUYOU: 連続飛び降り自殺の真相を突き止めるため、ミカはユカリ、チサト、アリサと共に調査を開始します。
電破 DENPOW: クラブでのテクノイベント後、ミカは耳鳴りに悩まされ、幻聴を聞くようになります。
開扉 KAIBYO: 霜北行きの電車内で、ミカは再び白髪の少年と出会い、深層心理へと誘われます。
慟悪 DOWAKU: ミカが失踪し、ユカリたちは彼女の行方を捜索します。
エピローグ EPILOGUE: 満月の夜、ユカリ、チサト、アリサは雛代高校に集まり、ミカの帰りを待ちます。

登場人物

岸井ミカ: 本作の主人公。雛代高校に通う2年生。流行に敏感で、享楽的な日々を送る一方、他人との関わりに臆病な一面も。
長谷川ユカリ: ミカの先輩で、前作の主人公。クールな外見とは裏腹に、ナイーブな性格。霊感を持つ幼馴染のチサトの影響で、怖がり。
逸島チサト: ユカリの幼馴染。霊感を持つ。妹のヤヨイとは対立関係にあります。
鹿原アリサ: 弓道部に所属するミカの友人。霊感を持つ。
華山リョウ: キョウコの弟。姉に対して異常な愛情を抱いています。
華山キョウコ: リョウの姉。ミカと瓜二つの容姿を持つ。交通事故で死亡。
冬葉スミオ: キョウコの元恋人。多くの女性と関係を持つ。
冬葉ルミ: スミオの妹。リョウと交際していた。
逸島ヤヨイ: チサトの妹。独自の理念に基づき、白髪の少年と行動を共にします。
高橋キミカ: ミカの友人。スミオに弄ばれ、悲劇的な結末を迎えます。
アラマタ: 作家。前作にも登場。雛代町に不穏な気配を感じ、調査を行います。
白髪の少年 (ミトラ): ミカとリョウの前に現れる謎の少年。物語の核心に関わっています。

開発

本作は、『トワイライトシンドローム』のディレクターを務めた須田剛一が企画しました。須田は、前作に対する反動から本作を制作したと語っています。また、声優を起用することで、キャラクターの個性をより引き出すことを試みました。

音楽

主題歌/エンディングテーマ: 「あなたは海の底」 - 桃乃未琴

評価

ゲーム誌では賛否両論の評価を受けましたが、PlayStation 2用ゲーム『SIREN』のシナリオライターである佐藤直子は、本作のシナリオに強い衝撃を受けたと語っています。

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