リチャード・マシスン

リチャード・マシスン（Richard Burton Matheson、1926年2月20日 - 2013年6月23日）は、アメリカ合衆国を代表する小説家、SF作家、ホラー小説作家、ファンタジー作家、ウエスタン作家、脚本家、映画プロデューサー、そして俳優としても知られる多才な人物です。その作品群は、小説、映画、テレビドラマなど、多岐にわたるメディアで展開され、世界中の人々に影響を与え続けています。

マシスンはニュージャージー州で、ノルウェー移民の両親のもとに生まれました。ブルックリン工科高校を卒業後、第二次世界大戦に幼年兵として従軍。戦後、1949年にミズーリ大学を卒業し（ジャーナリズム専攻）、1950年に『ファンタジイ・アンド・サイエンス・フィクション』誌に掲載された短編「モンスター誕生（男と女から生まれたもの）」で作家としてデビューしました。

彼の作品の特徴は、優れたストーリーテリング能力と、一つのアイデアを丁寧かつ繊細な描写で語るスタイルにあります。特に、映像媒体の脚本家としての才能は特筆に値し、スティーヴン・スピルバーグ監督の『激突!』（原作と脚本）や、『ヘルハウス』（原作と脚本）、エドガー・アラン・ポー原作の『恐怖の振子』、『黒猫の怨霊』、『忍者と悪女』、そして自作『Bid Time Return』の映画化作品『ある日どこかで』など、数々の名作映画に携わっています。また、『ミステリー・ゾーン／トワイライト・ゾーン』や『事件記者コルチャック』といったテレビドラマの脚本も数多く手がけました。

『トワイライト・ゾーン』などのテレビドラマでは、チャールズ・ボーモント、ロバート・ブロック、ハーラン・エリスンといった常連脚本家たちがおり、作家ピーター・ストラウブは彼らを「マシスン・マフィア」と呼びました。

マシスンは『ある日どこかで』にカメオ出演していますが、『ゴッドファーザーPARTII』にも出演しているというデマがいまだに流れています。これは、同作品にマシスンと親交の深かったロジャー・コーマン（ポー映画の製作・監督）と、バック・ホウトン（『ミステリーゾーン』の現場制作責任者）が出演しており、その間に座っている人物がマシスンに似ていると、面識のないマニアが言い出したことがきっかけです。しかし、実際には全くの別人であり、その後もコーマンとホウトンの背後にいる人物がマシスンだと主張されるなど、混乱が広がりました。

息子のリチャード・クリスチャン・マシスンも小説家、脚本家として活躍しており、父と同姓同名であることも話題です。また、娘について「『E.T.』の脚本家で俳優ハリソン・フォードの前夫人メリッサ・マシスン」とする文献がありますが、これは誤りです。

2013年6月23日、マシスンはロサンゼルスの自宅で87歳で亡くなりました。

主な受賞歴

全米[[脚本家組合賞]]
ブラム・ストーカー賞（世紀の吸血鬼小説『地球最後の男』、2013年）
世界幻想文学大賞長編部門（『ある日どこかで』、1976年）
ハワード賞・グランドマスター（世界幻想文学大会、1984年）
エドガー賞
黄金の拍車賞（ウエスタン作家協会主催）

影響

初期の長編『吸血鬼』は、『地球最後の男』（1964年）、『地球最後の男オメガマン』（1971年）、『アイ・アム・レジェンド』（2007年）として3度映画化されました。本作で描写された「夜の一軒家を大勢の吸血鬼が包囲し、攻め寄せてくる」というイメージは、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』に取り入れられています。また、藤子・F・不二雄のSF短編『流血鬼』は、本作へのオマージュ作品です。

リチャード・マシスンは、その独創的なアイデアと卓越したストーリーテリング能力で、SF、ホラー、ファンタジーといったジャンルに多大な影響を与えた、不朽の作家と言えるでしょう。

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