一瀬邦夫

一瀬邦夫：外食産業の風雲児、その波瀾万丈な人生

一瀬邦夫（いちのせ くにお）は、1942年生まれの実業家であり、株式会社ペッパーフードサービスの創業者として知られています。彼の人生は、洋食コックから出発し、「ペッパーランチ」や「いきなり!ステーキ」といった革新的なステーキレストランを創り上げるまでの、挑戦と創造に満ち溢れています。

生い立ちと修業時代

静岡県静岡市に生まれた一瀬氏は、幼少期を富士宮市で過ごした後、東京へ。母親の勧めで洋食の世界へ足を踏み入れます。母親からは「日本で五本指に入るようなコックになるんだよ」と激励され、その言葉を胸に、キッチンナポリ、聚楽台、山王ホテルといった名店で腕を磨きました。

9年間の修行後、一瀬氏は独立を決意。1970年、店舗面積6坪の小さな店「キッチンくに」を開業します。その後、「ステーキくに」と改名し、着実に事業を拡大。1979年には自社ビルを構えるまでに成長しました。

苦難と再起

順風満帆に見えた一瀬氏の経営でしたが、外食コンサルタントの誘いをきっかけに、複数の店舗を同時期に出店したことが、経営を圧迫する要因となります。急激な店舗拡大は従業員の負担を増大させ、借金も膨らみました。一時は倒産の危機に瀕するも、給与削減などの断行で会社を再建。

ペッパーランチ、そしていきなり!ステーキへ

1994年、一瀬氏は低価格ステーキハウス「ペッパーランチ」の展開を開始します。蓄熱性の高い鉄皿で肉を焼くというアイデアは、コックを育成する時間がない中で生まれたもので、妻がまかない料理として作っていたステーキの端肉とご飯を鉄皿で焼いたものからヒントを得ました。牛肉輸入自由化の流れにも乗り、ペッパーランチは瞬く間に全国へと広がっていきます。

2013年には、立食形式の低価格ステーキハウス「いきなり!ステーキ」をスタート。これは、「ペッパーランチ」で人気を博した「ワイルドステーキ」をさらに進化させたもので、手軽に本格的なステーキを楽しめるスタイルが受け、大きな話題となりました。

晩年と新たな挑戦

2022年、一瀬氏は長年務めたペッパーフードサービスの代表取締役社長を辞任。しかし、その情熱は衰えることなく、2023年には両国に「和牛ステーキ和邦」をオープンし、自ら厨房に立ちます。また、YouTubeチャンネルを開設し、情報発信も積極的に行っています。

メディア出演と著書

一瀬氏は、テレビ番組「カンブリア宮殿」に出演したほか、ゲーム「JUDGE EYES:死神の遺言」では本人役として登場するなど、幅広い分野で活躍しています。また、『ペッパーランチ物語』、『いきなり！ステーキ―常識を突き破る、不滅の経営』など、自身の経営哲学や経験を綴った著書も多数出版しています。

まとめ

一瀬邦夫は、時代の変化を敏感に捉え、常に新しい挑戦を続けることで、外食産業に大きな影響を与えました。彼の波瀾万丈な人生は、多くの起業家や経営者にとって、示唆に富むものでしょう。80歳を超えてもなお、現役として厨房に立つ彼の姿は、まさに「生涯現役」を体現していると言えるでしょう。

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