三上山

三上山：近江富士の雄姿と歴史の息吹

滋賀県野洲市にそびえる三上山（みかみやま）は、標高432メートルの山ながら、その存在感は圧倒的です。古くから近江富士（おうみふじ）として親しまれ、琵琶湖の西岸からもその雄大な姿を見ることができます。平野部に孤立してそびえる残丘（モナドノック）であるため、その景観は周辺の風景と際立ち、古来より人々の心を捉えてきました。

三上山の麓には、山を神体山として祀る御上神社（みかみじんじゃ）が鎮座し、滋賀県希望が丘文化公園も隣接しています。豊かな自然と歴史が調和した、魅力的な場所と言えるでしょう。

歴史の重み：神話の時代から現代まで

三上山の歴史は古く、『古事記』や『延喜式』にもその名が記されています。多くの和歌にも詠まれ、その風景は古くから人々の感性を刺激してきたことがわかります。紫式部も「打ち出でて　三上の山を　詠れば　雪こそなけれ　富士のあけぼの」と詠み、その姿が富士山を思わせる景観を表現しています。

また、藤原秀郷（俵藤太）による大ムカデ退治伝説も残り、「ムカデ山」という異名も持つなど、山には様々な物語が刻まれています。

中世以降は、周辺の山々同様に燃料などの採取のために大規模な伐採が行われ、荒廃の一途を辿りました。織田信長も上洛の際にその様子を見て、街道から見えない部分での伐採を指示したという記録が残っています。

しかし、徳川秀忠は大坂の陣からの帰途、その荒廃ぶりに心を痛め、植林と保護を命じました。1619年からはマツ、クリ、アオギリなどの植林が開始され、1658年には間伐された木が野洲川の護岸や土砂止めとして利用されました。間伐後はマツタケが発生するようになり、その収益は御上神社の社殿修理に充てられました。

その後、三上山は周囲の山々と比べて緑豊かな山容を維持し、ランドマーク的な存在感を増していきました。松尾芭蕉も「三上山のみ夏知れる姿かな」と詠んでおり、その雄大な姿は多くの文人墨客を魅了し続けています。

アクセスと周辺情報

三上山へのアクセスは比較的容易です。JR東海道本線（琵琶湖線）野洲駅から南東へ約2km、名神高速道路栗東ICからもアクセス可能です。国道8号や複数の県道も通っており、車でのアクセスも便利です。

周辺には、滋賀県立近江富士花緑公園があり、自然豊かな散策を楽しむことができます。また、近江富士花緑公園は、近江富士の美しい眺望を楽しめる絶好のスポットです。

そして現在へ

三上山は、歴史と自然が織りなす、滋賀を代表する景勝地です。近江富士として愛され、人々の暮らしと深く関わってきたこの山は、これからもその雄大な姿を未来へと繋いでいくことでしょう。その歴史と自然に触れることで、私たちはその土地の息吹を感じ、新たな感動を覚えることができるはずです。

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