上椎葉ダム

上椎葉ダムの概要

上椎葉ダムは宮崎県東臼杵郡の椎葉村に造られた、耳川の最上流に位置するダムです。このダムは九州電力が管理している発電用ダムで、高さは111メートルに達します。日本初の100メートル級のアーチ式コンクリートダムとして、土木技術に対しても大きな影響を与えています。ダムによって形成された人造湖は「日向椎葉湖」と命名され、2005年には地元の推薦によりダム湖百選に認定されました。現在、上椎葉ダムは九州中央山地国定公園内に位置し、観光名所としても知られています。

歴史的背景

耳川流域はかつて交通の便が悪く、最上流部と下流の道路が開通したのは1933年まで遡ります。この交通の改善に伴い、耳川における電源開発が加速しました。初めに動き出したのは住友財閥であり、この地域の発電用水利権を取得しようとしましたが、最終的には九州送電が水利権を取得しました。その後、1938年に塚原ダムが完成し、耳川における水力発電計画がさらに進展する中、戦時体制によって電力事業が国家管理へと移行しました。

戦後、国土の復興が急がれ、1938年の塚原ダムの成功を受け、上椎葉ダムの建設計画が再開されることとなりました。日本発送電九州支店は1946年に測量を始め、1950年には建設工事がスタートします。

大規模アーチダムの採用

上椎葉ダムは計画段階から100メートル超の高さを目指しており、初めは重力式コンクリートダムが予定されましたが、海外技術顧問団（OCI）の助言により、地盤条件を考慮してアーチ式コンクリートダムが選ばれました。日本ではアーチダムの建設は未経験の分野であり、特に地震に対する耐性の不安がありました。それでも、OCIは地盤的にアーチダムが最も適しているとの結論に達しました。

設計に際しては、安全性を第一に考え、洪水吐きなどの設計が変更され、最終的には厚肉のアーチダムが完成しました。その結果、上椎葉ダムは1955年に完成し、九州電力の中でも重要なダムとしての役割を果たしています。

ダム建設の挑戦

ダムの建設には困難な工程が伴いました。地盤の掘削では予想以上の厳しい条件があり、工事は困難を極めました。さらに、現場で使用した重機の操作には未熟な作業員が多く、故障も頻発しました。自然災害、特に台風による影響も大きく、1954年の台風では総雨量700ミリを記録し、工事が半年遅延する結果となりました。しかし、その中でもダム本体は無傷であり、その耐久性が証明されました。

上椎葉発電所の役割

ダムに付設された上椎葉発電所は90,000キロワットの発電能力を持ち、北九州工業地帯への電力供給を担当しています。発電所は無人であり、遠隔操作で管理されているため、効率的な運営が行われています。耳川流域では他にも発電所が多数建設されており、上椎葉発電所はその中心的存在です。

観光資源としての活用

日向椎葉湖は釣りスポットとしても知られ、春や秋の自然の姿が特に美しい時期に訪れる人々を魅了しています。毎年7月には椎葉夏祭りが開催され、花火が湖を彩ります。また、ダム近くには「鶴富姫伝説」に関連する文化的な建物や観光名所も点在し、多くの観光客が訪れています。アクセスには注意が必要ですが、公共交通機関も利用できます。上椎葉ダムは現在、発電だけでなく、観光資源としても地域に貢献しています。

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