中古音

中古音（ちゅうこおん）

中古音は、音韻学において、中国の南北朝時代後期から隋、唐、五代、宋の初期にかけて用いられた中国語の音韻体系を指します。この期間は、中国語の音韻が大きく変化した時期であり、その変遷を理解する上で非常に重要な概念です。

中古音の区分

中古音は、その発達段階によって大きく二つに分けられます。南北朝時代後期から隋、唐代初期までを前期中古音、唐代中期から五代、宋初にかけてを後期中古音と呼びます。特に、前期中古音は中古音の研究において中心的な役割を果たしており、その時代の音韻体系は「隋唐音」とも呼ばれることがあります。

狭義には、中古音の復元の基礎となる韻書『切韻』に示された音韻体系を指すことが多く、この『切韻』の体系は、中古音を理解するための重要な手がかりとなります。

中古音の推定方法

中古音は、直接的な音声記録が残っていないため、様々な資料をもとに推定されています。

韻書：『切韻』をはじめとする韻書は、当時の発音を反映した韻目や反切の記述を通じて、音韻体系を復元するための重要な資料となります。
韻図：韻図は、韻書をさらに分析し、音韻の構造を図式化したものです。韻図の分析によって、当時の音韻体系がどのように組織されていたのかを理解することができます。
現代中国語の方言：現代中国語の各方言は、中古音からの変遷を異なった形で受け継いでおり、その比較を通じて中古音の姿を推定することができます。
周辺言語の漢字音：日本語、朝鮮語、ベトナム語など、漢字を使用する周辺言語における漢字音は、中古音の痕跡をとどめていることがあり、これらの方言を比較することで、中古音を推定する手掛かりとなります。

中古音の重要性

中古音は、現代中国語の音韻体系を理解する上で不可欠なだけでなく、漢字音の歴史的変遷を研究する上で重要な役割を果たしています。また、周辺言語における漢字音の研究も、中古音の体系をより深く理解するために役立っています。音韻学の研究対象として、中古音は、中国語の歴史と文化を理解する上で欠かすことのできない要素と言えるでしょう。

関連事項

上古音：中古音以前の古代中国語の音韻体系
近古音：中古音以降の明清時代の音韻体系
漢字：中国語の表記体系であり、中古音を研究する上での資料の一つ
音韻学：言語の音の体系を研究する学問分野
等呼：中国音韻学における音節の分類法の一つ
五音：中国音韻学における子音の分類
三十六字母：中国音韻学における子音の分類
反切：中国の伝統的な音の表記法
四声：中国語の声調の分類（平声、上声、去声、入声）
漢音：日本における漢字音の一つ
朝鮮漢字音: 朝鮮語における漢字音

外部リンク

An Etymological Dictionary of Common Chinese Characters

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