中西寛

中西寛（なかにし ひろし）

日本の国際政治学者。1962年8月24日生まれ。京都大学大学院法学研究科の教授として教鞭を執り、国際政治学を専門分野としている。高坂正堯に京都大学で、入江昭にシカゴ大学で師事した経験を持ち、高坂正堯と同様にアメリカを重視する現実主義的な外交・安全保障政策論を展開している。

経歴と学問的背景

大阪府池田市で生まれ育った中西寛氏は、甲陽学院中学校・高等学校を経て、1981年に京都大学経済学部に入学。翌年、法学部に転籍し、1985年に卒業した。その後、同大学院法学研究科修士課程に進み、1987年に法学修士の学位を取得。大学院在籍中の1988年から1990年にかけてシカゴ大学歴史学部の博士課程に留学し、学識を深めた。1991年に京都大学大学院法学研究科博士後期課程を退学し、同年に京都大学法学部助教授に就任。大学院重点化に伴い、1992年には京都大学大学院法学研究科助教授となる。2002年には同大学院の教授に昇任し、現在に至るまで、国際政治学の研究・教育の第一線で活躍している。この間、公共政策大学院研究科長（2016年～2018年）や、公共政策連携研究部教授を兼担するなど、学内の要職も務めている。

主な活動と貢献

中西氏は、学術研究にとどまらず、日本の政策形成過程においても重要な役割を果たしてきた。特に、安全保障政策に関する政府の諮問機関や有識者会議に複数回参加している点が特筆される。例えば、第1次および第2次安倍内閣における「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」や、麻生内閣、鳩山内閣、菅内閣のもとで開催された「安全保障と防衛力に関する懇談会」などで有識者委員を務め、日本の安全保障法制や防衛力に関する議論に貢献した。また、「21世紀日本の構想」懇談会や「外交政策勉強会」など、幅広い分野の政策検討にも関与している。

学術団体においては、日本国際政治学会で理事長（2014年～2016年）を務め、学会の運営と発展に貢献した。さらに、平和・安全保障研究所理事、日本国際フォーラム評議員、新日中友好21世紀委員会日本側委員など、国内外の様々なフォーラムや委員会のメンバーとして活動している。これらの活動を通じて、日本の国際政治学の知見を社会に還元し、政策提言や国際交流にも積極的に関わっている。

著書と受賞歴

中西氏の主要な研究成果は、数多くの著書や共編著、共著として発表されている。単著としては、『国際政治とは何か――地球社会における人間と秩序』（中央公論新社、2003年）があり、この著作によって第4回読売・吉野作造賞を受賞した。国際政治学の基本概念を分かりやすく解説し、この分野への入門書として広く読まれている。

共編著・共著も多数あり、田中明彦氏や石田淳氏、田所昌幸氏、五百旗頭真氏、伊藤之雄氏といった著名な研究者たちと共同で研究を進めている。特に、『戦後日本外交史』（五百旗頭真 編、有斐閣、1999年）への分担執筆は、第29回吉田茂賞の受賞対象となった。また、小林道彦氏との共編著『歴史の桎梏を越えて――20世紀日中関係への新視点』（千倉書房、2010年）は、第27回大平正芳記念賞特別賞を受賞するなど、その研究業績は高く評価されている。これらの著作は、日本の外交史、安全保障、日中関係など、幅広いテーマを扱っており、学術界における氏の貢献の大きさを物語っている。

政治家である前原誠司氏は、京都大学の高坂ゼミにおける一年後輩にあたる。中西氏の学問的見識と政策提言能力は、日本の国際関係論と安全保障論において重要な位置を占めていると言える。

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