主軸

主軸（しゅじく）

工作機械において、加工対象となる材料（工作物）や、切削、研削などの加工を行う工具を取り付け、これを正確に回転させる最も中心的な役割を担う軸のことを「主軸」と呼びます。工作機械の機能において最も重要な要素の一つであり、「スピンドル」や「シャフト」といった名称で呼ばれることもあります。

主軸の機能と重要性

主軸は、加工プロセス中に発生する切削力や研削力といった外部からの応力（曲げやねじりなど）を直接受け止めます。これらの応力によって主軸がわずかでもたわんだり、位置がずれたり、振動したりすると、加工精度に深刻な影響を与えてしまいます。そのため、主軸には極めて高い剛性が求められます。また、高い回転精度を維持しつつ、これらの応力に耐え、安定した回転を継続できる設計が必要です。

主軸の回転運動を滑らかかつ正確に維持するため、主軸を支える軸受（主軸受）には特に精密なものが使用されます。通常、高精度な転がり軸受が用いられ、主軸のブレや傾きを最小限に抑える構造となっています。

呼び名の多様性

主軸は、その機能や取り付けられる工具、あるいは機械の種類によって様々な名称で呼ばれることがあります。例えば、「中ぐり主軸」「フライス主軸」「カッタスピンドル」「ドリルスピンドル」「といし軸」「バフ軸」といった工具の種類に由来する呼び方や、「工作主軸」「ワークスピンドル」「ワークアーバ」といった工作物を回転させる軸を指す呼び方などがあります。また、「主軸ユニット」のように、主軸とその周辺部品を一体化したモジュールを指す場合もあります。このように多様な呼び方があるものの、一台の一般的な工作機械においては、主要な回転軸として機能するものは通常一つであることが多いです。

各種工作機械における主軸

工作機械の種類によって、主軸の役割や構造には特徴があります。

旋盤

旋盤における主軸は、主にチャックなどの把握具を介して工作物を取り付け、これに回転運動を与える役割を担います。切削工具は刃物台に固定され、静止した工具に対して回転する工作物が加工されます。

フライス盤

フライス盤では、主軸は主に切削工具（フライス、エンドミルなど）を取り付けて回転させる役割を果たします。

立てフライス盤: 主軸が垂直方向に配置されており、ツーリングシステムを用いて工具が直接または間接的に取り付けられます。
横フライス盤: 主軸が水平方向に配置されており、主にアーバと呼ばれる軸を介してフライスを取り付けます。アーバの両端はアーバ支えによって支持されるため、主軸にかかる切削応力が分散され、より安定した加工が可能です。

ボール盤

ボール盤の主軸は、ドリルやリーマといった穴あけ工具を取り付けて回転させる機能に加え、軸自体が上下に伸縮することで工具を送る（送り運動を行う）役割も併せ持ちます。

研削盤

研削盤の場合、どちらの軸が主軸と呼ばれるかは状況によります。工作物を回転させて加工する場合は、工作物を取り付ける軸を主軸と呼びます。それ以外のケース、例えば砥石車（研削工具）のみが高速回転して固定された工作物を加工する場合などでは、砥石車を取り付ける軸を主軸と称することがあります。

歯車形削り盤

歯車形削り盤では、工作物（ブランク材）を取り付け、所定の回転運動を与えるための軸を「ワークスピンドル」と呼び、これが主軸とみなされます。このワークスピンドルは、歯車形削り盤やまがりばかさ歯車歯切り盤など、歯車加工機の多くに共通して見られる構成要素です。また、ピニオンカッタなどの工具を取り付け、回転運動または往復運動を行う「カッタスピンドル」も、広義には主軸と呼ばれることがあります。

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