俳優座劇場

俳優座劇場について

俳優座劇場（はいゆうざげきじょう）は、東京都港区六本木に位置する民営劇場で、2025年の4月末に閉館が予定されています。この劇場は、劇団俳優座の創立10周年を記念して1954年に開場されました。設立の背後には、劇団のメンバーである千田是也、東野英治郎、東山千栄子、そして小沢栄太郎らが、東京大空襲で焼失した築地小劇場の精神を受け継ぎ、新たな新劇のための劇場を自らの手で創りたいという理想があったのです。

初めて上演された作品はアリストパネスの『女の平和』とマルシャーク作の『森は生きている』でした。開場当時の劇場は4階建てであり、六本木エリアで最も高いビルの一つでした。このため、屋上からは東京湾が眺望でき、当時の著名な文人から「海の見える劇場」と評されました。1980年には9階建てに改築され、300席を有する客席が設置されましたが、近年の老朽化と経営の厳しさから、閉館の決定に至りました。

俳優座劇場は劇団俳優座専用ではありません。実際には、1953年に設立された株式会社俳優座劇場が管理・運営を行っています。初代社長は舞台美術家の伊藤熹朔であり、劇団の顔とも言える東野英治郎も取締役を務めていました。1981年からは、自主企画公演「俳優座劇場プロデュース」が始まり、初回の作品として加藤道夫の「なよたけ」が上演されます。その後も様々な名作が上演され、中でもアガサ・クリスティーの『検察側の証人』やレジナルド・ローズの『十二人の怒れる男たち』などが特に有名です。

劇場内の施設について紹介しますと、客席は1フロアのみで総席数は300席です。全ての席からは舞台上の演者を間近に見ることができるデザインになっています。また、ロビーには英国風パブ「ハブ」が併設されており、訪れる観客にもう一つの楽しみを提供しています。さらに、客席の階段にはギリシャ喜劇の人物像のレリーフが飾られ、「汝は人間である。つねにそのことを自覚して忘れるな。」という言葉が刻まれています。これは、旧・俳優座劇場の正面入り口に掲げられていたものです。

アクセスについてですが、最寄りの駅は六本木駅で、都営大江戸線および東京メトロ日比谷線の6番出口からすぐの場所にあります。非常に便利な立地にあたるため、多くの観客が訪れる劇場として知られています。

劇場には付属の舞台美術部があり、これは初代社長の伊藤熹朔の計らいによって設立されました。この部門では、演劇やテレビ番組などの大道具セットを制作する会社として、NHKや日本テレビ、テレビ朝日といった多くのメディアと提携しています。1953年に設立されたこの部門は、2017年に事務部門を埼玉県越谷市に移転し、さらに製造部門も移転を行いました。

俳優座劇場は多くの人々に愛されてきた文化の象徴であり、閉館に向けて多くの方々がその姿を見届けたいと願っていることでしょう。

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