円形脱毛症

円形脱毛症について

円形脱毛症（alopecia areata）は、頭部に円形の脱毛斑ができる自己免疫疾患です。一般的に「十円ハゲ」とも呼ばれ、男女問わず、どの年齢層でも発症する可能性があります。この病気は、毛包が自己免疫によって攻撃されることで発症すると考えられており、精神的なストレスやアレルギー、遺伝的要因などが複合的に関与していると言われています。

円形脱毛症の症状

円形脱毛症にはいくつかのタイプがあり、症状の現れ方も様々です。

単発型

最も一般的なタイプで、頭部に円形の脱毛斑が一つだけ現れます。初期症状として、脱毛部分のかゆみやフケを伴うことがあります。約6割は自然治癒しますが、他のタイプに移行することもあります。

多発型

複数の脱毛斑が同時に現れるタイプです。単発型から進行する場合が多く、脱毛斑同士が結合して大きな脱毛範囲になることがあります。頭髪だけでなく、全身の体毛に症状が現れることもあります。

多発融合型

脱毛斑が広範囲に結合し、さらに複雑な症状を示すタイプです。

びまん性: 頭髪全体に平均的に脱毛が見られる、難治性の高い症状です。
蛇行性: 蛇のように細長く脱毛する症状で、後頭部や側頭部の生え際に見られます。

全頭型

頭髪が全て抜け落ちるタイプです。女性に多く、急速に進行して頭部全体が脱毛します。しかし、自然に治癒する場合もある特殊なタイプも報告されています。

汎発型

頭髪だけでなく、ひげ、すね毛、陰毛など全身の体毛が抜け落ちる重症型です。治療が難しく、予後も不良となることが多いとされています。

また、円形脱毛症の患者の中には、爪に横筋や小さな凹みができたり、爪自体が歪んだりする症状が見られることがあります。これは、爪と毛の構造が類似しているためです。

円形脱毛症の原因

円形脱毛症は、自己免疫疾患の一つであり、本来は体を守るはずの免疫細胞（CD8陽性Tリンパ球）が、毛根部分を誤って攻撃することで発症します。この免疫反応には、CD4陽性T細胞も関与しています。なぜ免疫細胞が誤って攻撃するのかはまだ解明されていませんが、遺伝的要因、ストレス、アレルギーなどが関与していると考えられています。

アレルギーとの関連性

円形脱毛症患者の多くは、アトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー疾患を合併していることが多く、これらのアレルギーが円形脱毛症の発症や悪化に関わっていると考えられています。

ストレスとの関連性

以前はストレスが主な原因と考えられていましたが、現在ではストレスはあくまで誘因の一つであり、体内のアレルギーや自己免疫異常が複合的に関与していると考えられています。しかし、ストレスが引き金となり発症、重症化する可能性も指摘されています。

円形脱毛症の診断

円形脱毛症の診断は、主に脱毛斑の形状や分布、進行具合などを観察することによって行われます。ガイドラインでは、脱毛の程度によって重症度を分類しています。

円形脱毛症と間違えやすい疾患としては、抜毛症、ケルズス禿瘡、甲状腺機能亢進症、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎などがあります。

円形脱毛症の治療

円形脱毛症の治療は、皮膚科で行われます。脱毛専門の外来を設けている病院もあり、重症な場合は入院治療が必要となることもあります。治療法は多岐にわたり、患者の症状や状態によって適切な治療法を選択する必要があります。

ステロイド療法

炎症を抑え、免疫反応を抑制するために、ステロイド外用薬、ステロイド局所注射、ステロイド内服薬などが使用されます。内服ステロイドは重症例に有効ですが、副作用のリスクもあるため、注意が必要です。

局所免疫療法

人工的にかぶれを起こすことで、免疫反応を変化させ、毛根の回復を促す治療法です。ステロイド療法が難しい小児にも適応されます。ただし、アトピー性皮膚炎を悪化させる可能性があるため、併用には注意が必要です。

免疫抑制剤

免疫抑制剤は、毛根を攻撃するリンパ球を減らす効果が期待されますが、効果は一定していません。

PUVA療法

紫外線を照射することで、過剰なリンパ球の働きを抑制する治療法です。入院治療で行われることが多いですが、内服薬が販売停止となっているため、治療が難しい状況となっています。

その他の治療法

セファランチン、JAK阻害薬（オルミエント）、液体窒素療法、ドライアイス療法、塩化カルプロニウム外用などが用いられることもありますが、エビデンスレベルが低いものもあります。また、精神安定剤や漢方薬は推奨されていません。

生活上の注意点

円形脱毛症は、見た目の変化が大きいため、精神的なストレスを抱えやすい病気です。そのため、周囲の理解とサポートが非常に重要です。また、患者自身が生活習慣や体調を見直すことも、治療において重要な要素となります。

疫学

円形脱毛症は、30歳以下の若年層に多いのが特徴です。男女比では、やや女性に多い傾向があります。また、生理や出産によって症状が悪化したり、治癒したりすることがあります。

まとめ

円形脱毛症は、自己免疫疾患であり、完治が難しい病気ですが、適切な治療と生活習慣の見直しによって、症状をコントロールすることが可能です。この病気に対する理解を深め、適切な医療機関を受診することが大切です。

参考文献

日本皮膚科学会『日本皮膚科学会 円形脱毛症診療ガイドライン2010』(レポート), 2010年
日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2017

外部リンク

National Alopecia Areata Foundation
Alopecia Areata - ウェイバックマシン（2012年10月12日アーカイブ分） （英語） Medpedia「円形脱毛症」の項目。

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