刀子

刀子（とうす）

刀子は、物を切ったり削ったりする加工に用いられた工具の一種であり、現代の小型ナイフに通じるものです。その長さは15cmから30cm程度です。

概要

刀子は、鉄製の農工具の中でも、農機具や鉄器生産関連工具とは異なり、万能工具として分類されます。一般的には加工工具として使われますが、厨房具、化粧道具、儀仗用、木簡の表面を削る書刀としても利用されました。

中国では、殷代前期の二里頭文化から青銅製の刀子が見られます。多くは環頭形で、刃はまっすぐなものから内側に湾曲したものまで様々で、墓の副葬品としても出土します。戦国時代には鉄製の刀子が現れ、漢代には象嵌で装飾されたものや、鞘口近くの環に紐を通したものも見られます。

大陸で作られた刀子は、渡来品として日本や朝鮮半島でも発見されています。

日本

山形県の三崎山遺跡からは、大陸との交易で入手したと考えられる約3000年前の青銅刀子が出土しています。縄文時代後・晩期には、青銅製刀子の模造品と思われる石刀が見られ、古墳時代になると鉄器が普及し始め、4世紀には刀子を含む鉄器製品が古墳の副葬品として出土します。特に京都府の椿井大塚山古墳などの前期古墳からの出土例が多く見られます。6世紀以降には一般にも使われるようになり、金銅で装飾されたものや、刀身に合わせた鞘に収められたもの、把手に文様を持つものなどが現れました。

刀剣類は一般的に武人・武官を象徴するものというイメージが強いですが、古代の東洋においては、刀子は文人・文官を象徴するものでした。これは、紙が貴重品であり、木簡・竹簡が広く使用されていた時代に、書き間違えた文字を削って修正するために必須の道具だったからです。正倉院宝物には刀子が現存していますが、これは武器ではなく文房具として分類されています。

刀子は、その多様な用途と象徴性から、古代社会において重要な役割を果たしていたことがわかります。

参考文献

『日本思想大系 律令』 岩波書店 1976年

関連項目

鉄刀
マキリ
プーッコ

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