十四年式拳銃

十四年式拳銃について

十四年式拳銃（じゅうよねんしきけんじゅう）は、1920年代の中頃に開発され、1925年に大日本帝国陸軍に正式採用された自動式の拳銃です。この武器は、1900年代に誕生した南部式大型自動拳銃を改良したものであり、そのため「南部十四年式拳銃」とも呼ばれることがありますが、正式名称はあくまで十四年式拳銃です。南部麒次郎が設計の基礎研究に携わったものの、設計自体には直接関与していません。

概要

十四年式拳銃は、日本軍の独特な8x22mm南部弾を使います。弾倉は通常8発装填されており、1発が薬室に装填されるため、合計で9発の弾薬を持つことができます。試作型には16発のダブルカラム弾倉もあったものの、制式モデルとして採用されたのは8発のシングルカラム弾倉であり、これが一般的に使用されました。外観はルガーP08に似ており、ストライカー式の撃発装置を持つため「和製ルガー」という呼称が使われることもありますが、内部構造はまったく異なり、むしろモーゼルC96やグリセンティM1910に似ています。実際、南部麒次郎自身もこの拳銃には特に際立った特徴がないと回想しています。

開発過程

十四年式拳銃の開発は、1924年に南部麒次郎の助言を受け、名古屋工廠で始まりました。この開発の目的は、南部式大型自動拳銃の製造コストを削減し、耐久性を向上させることでした。そこで、製造プロセスの簡略化や安全機構の見直しが行われました。1925年には、旧来の二十六年式拳銃の後継として陸軍に正式採用され、国内外での小口販売も始まります。

構造

十四年式拳銃の撃発機構にはストライカー方式が採用されています。引き金を引くと、トリガーバーが逆鉤を押し上げ、その結果撃茎が薬莢後端に衝撃を与えます。この構造により、手の小さい日本人でも扱いやすい細身の銃把を実現しています。また、撃茎ばねは、後退した円筒が前進する際に圧縮される「コック・オン・クロージング」方式を採用しているのが特徴です。

自動装填機構

この拳銃は、南部式自動拳銃と同様のプロップアップ式ショートリコイル機構を採用しています。発砲の際、ボルトとスライドが後退し、排莢と次弾の装填が行われます。弾倉を交換する際は、後部の円筒形ノブを引いてボルトを後退させる必要があります。

安全装置

手動の安全装置は、引き金鉤板肩部の動きを妨げ、引き金を引けなくする仕組みです。安全栓は、銃床の左前側に位置し、手動で操作可能です。また、弾倉を抜くと引き金を引けなくなる安全装置や、ホールドオープン機能も備わっています。

改良

十四年式拳銃は、採用期間中にいくつかの改良が施されました。例えば、引き金の構造の改善や、弾倉の形状の変更などがあります。しかし、施工費用が自己負担であったことから、多くの兵士が改良を受けられなかったとされています。

運用

日本軍では、制式拳銃である十四年式拳銃は、下士官兵に支給されました。1930年代中頃に採用された九四式拳銃は国産化を目的としたものであり、十四年式拳銃の後続ではありません。そのため、十四年式拳銃は、1945年まで日本軍の主力拳銃として使用されました。生産数は約28万丁に上ります。

終戦後

終戦後、この拳銃は連合国側に接収されましたが、日本政府は警察への支給用として一部が返還されました。これにより、少なくとも1948年までは使用され続けました。また、海上保安庁でも同様に利用されていました。

海外での使用

十四年式拳銃は、東南アジアや中国大陸で独立戦争や国共内戦、朝鮮戦争などで使用されました。特に中国では形状から独特の愛称が付けられ、多くの軍事衝突においてその存在感を示しました。

派生型

北支一九式拳銃は、南部式および十四年式の最後の派生型であり、独自の改良点が多数あります。この銃は日本本土ではなく、占領下の中国で生産されました。

まとめ

十四年式拳銃は、特有の設計や機能、安全装置を兼ね備えた日本の自動式拳銃で、実用性と生産性が両立されたモデルです。その歴史や構造を理解することは、日本の軍事史を知る上で非常に重要です。

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