南州太郎

南州 太郎（なんしゅう たろう）

1935年（昭和10年）9月10日、鹿児島県鹿屋市に生まれた。本名、岩下富士男。漫談家、そして俳優としても知られる人物である。

経歴

郷里を出た後、海上自衛隊に入隊し、呉音楽隊に所属した。約3年間の勤務を終え満期除隊後、新たな道を求めコメディアンの世界へ足を踏み入れる。浅草松竹演芸場の舞台に立ち、その才能を開花させた。特に、独特の言い回しである「おじゃまします」や「がんばらなくっちゃ」は、当時の人々の間で広く使われる流行語となり、南州太郎の名を全国に知らしめるきっかけとなった。芸能事務所である芸映プロに所属し、活動の幅を広げていった。

主な活動

テレビドラマ出演

俳優としては、実に多くのテレビドラマに出演している。NHK大河ドラマでは、1963年の『花の生涯』や1974年の同名作品、また『勝海舟』といった歴史大作に名を連ねた。時代劇では『水戸黄門』（第1部第18話、第39部第16話など）、『必殺仕業人』（第11話）、『大江戸捜査網』（第505話）、『薩摩飛脚』など、様々な作品に登場。現代劇では『フジ三太郎』（1968年版）で女っぽい警官を演じたほか、『特別機動捜査隊』（第454話、第456話）、『愛ぬすびと』、『けんか安兵衛』、『燃える捜査網』（第8話）などに出演し、幅広い役柄をこなした。また、特撮シリーズ『激走戦隊カーレンジャー』（第5話、第38話）や、人気ミステリーシリーズ『金田一少年の事件簿』（黒死蝶殺人事件）など、時代やジャンルを問わず活動を展開。晩年に近い時期まで、『生きるための情熱としての殺人』、『弁護士高見沢響子』、『またのお越しを』、『銭湯の娘!?』といった作品に出演し、その存在感を示し続けた。

バラエティ・CM

テレビのバラエティ番組にも多数出演し、お茶の間を楽しませた。『笑点』、『夕やけニャンニャン』、『TV海賊チャンネル』など、人気番組でその個性的なキャラクターを発揮した。また、ナショナル、富士フイルム、ピップエレキバンといった大手企業のCMにも起用され、親しみやすいキャラクターが広く受け入れられた。

レコードリリース

漫談家としての人気を背景に、レコードも数枚リリースしている。1968年には流行語にもなった「おじゃまします」をタイトルにしたシングルを発表。大映レコードから発売されたこの盤のB面には「反省します」が収録され、どちらの曲でも彼の代表的な決めゼリフを聴くことができた。翌1969年1月にはテイチクレコードより「聞いてちょうだい」をリリースしたが、B面の「ハメハメ」はラテン調の軽快な楽曲ながら、歌詞の一部が問題視され、放送禁止となる異色の経歴を持つことになった。1970年11月発表の「がんばらなくっちゃ」も流行語に便乗したヒット曲となり、東芝音楽工業から発売された。B面の「ああ馬鹿みたや」は南州自身が作曲した楽曲で、クレージー・キャッツの「五万節」にも似た演歌調コミックソングとして評価が高い。1975年11月にはテイチクレコードから「お巡りさん、ありがとう」をリリース。B面の「婦警さん」は女性コーラスグループのマーガレットが歌唱しており、ジャケット写真も話題となった。

関連人物

芸能界では、同期や共演者など多くの人物と関わった。特に、当時人気絶頂だったコメディアンコンビ、コント55号（萩本欽一、坂上二郎）や、吉本新喜劇などで活躍した島田一の介らとの交流があった。また、B.A.C HOMIESの林雄介氏は彼の孫にあたる。

南州太郎は、元自衛官という異色の経歴から芸能界に入り、漫談家として一世を風靡した後、俳優としても長いキャリアを築いた。そのユニークなキャラクターと多才さで、日本のエンターテインメント界に確かな足跡を残した人物である。

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