原田泰夫

原田泰夫九段：昭和将棋界の鬼才と棋界発展への貢献

原田泰夫九段(1923年3月1日-2004年7月11日)は、昭和期の将棋界を彩った名棋士です。新潟県燕市出身、棋士番号35。加藤治郎九段門下で、その実力は当時最強の棋士の一人として知られていました。10歳の頃、関根金次郎名人の対局に感銘を受け、将棋棋士を志すも、父は反対。しかし、高等小学校卒業後、上京し、棋士への道を歩み始めます。

当初は溝呂木光治七段に弟子入りを志願しますが断られ、加藤治郎五段に師事することになります。1944年1月、四段に昇段しますが、同年4月に陸軍に入隊。中国で終戦を迎え、抑留生活を経て1946年6月に帰国、順位戦に参戦しました。

戦後、原田九段は昭和中期を代表する強豪棋士として活躍します。その実力は、大山康晴、升田幸三に匹敵すると評価され、名人以外の全プロ棋士が参加した最強者決定戦で優勝したこともありました。升田幸三九段との対局では、現役最後の棋聖戦で勝利を収めており、これは原田九段の名局として語り継がれています。

1965年には順位戦でB級2組に陥落するも、居飛車から振り飛車に棋風転換。1968年にはB級1組に復帰し、1971年には48歳でA級に復帰、これはB級2組まで陥落後A級に復帰した唯一の事例として「四十八歳の抵抗」と称賛されました。

原田九段の棋風は攻撃的なスタイルで知られ、特に「玉損の攻め」は有名です。晩年は相居飛車、対抗型、相振り飛車などオールラウンドな棋風へと変化を遂げました。1952年の「AB級対抗勝抜戦」では10連勝を達成、新潟出身であることから「原田謙信流」と呼ばれるほどでした。

また、実戦的な詰将棋作家としても知られており、1969年には芹沢博文七段との対局で389手の最長手数記録を残しています。

後進の育成にも力を注ぎ、多くの弟子を育てました。その中には佐藤義則八段、近藤正和七段らも含まれます。さらに、将棋の初心者向け解説者としても著名で、「三手の読み」を提唱、普及に尽力しました。数々の格言を残し、独特の表現で人気を集めました。

将棋界の発展にも大きく貢献しました。30代で日本将棋連盟会長を務めた唯一の棋士であり、引退後も棋界の重鎮として、タイトル戦の立会人や将棋イベントなどを通じて、棋界の発展に寄与しました。「自在流」、「さわやか流」、「自然流」、「光速流」など、多くの棋士の棋風命名にも携わっています。

原田家は代々医者・町学者の家系で、良寛との交流もあった歴史を持つ家系です。1948年には陸軍少将の娘と結婚、漫談家の西村楽天を媒酌人に迎えました。1961年から6年間日本将棋連盟会長を務め、旧将棋会館建設にも尽力しました。

俳人、書家としても活動し、「泰風」と号しました。羽生善治名人が小学5年生の時に対戦した記録も残っています。話好きで知られ、パーティーのスピーチでは話が止まらなくなることでも有名でした。

1996年には師匠である加藤治郎九段の死去後、将棋ペンクラブ名誉会長を継承。医事評論家の石垣純二氏からは、高い人格者として絶賛されています。

数々の著書も残しており、『よくわかる将棋』はロングセラーとなっています。1982年に引退、九段を贈位されました。原田泰夫九段の功績は、昭和将棋史に燦然と輝くものと言えるでしょう。

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