咲来駅

咲来駅：北海道の秘境駅を訪ねて

北海道中川郡音威子府村に位置する咲来駅は、JR北海道宗谷本線沿線にある無人駅です。1912年（大正元年）11月5日、宗谷線の延伸開業に伴い開設されました。開業当初は一般駅として、貨物や荷物の取扱い、駅員による業務が行われていました。

かつては、周辺地域の林業が盛んであり、咲来駅は木材の出荷拠点として重要な役割を担っていました。駅舎は木造建築で、貨物積卸場や引込み線なども備え、活気に満ちていた様子がうかがえます。駅舎を中心とした千鳥状の2面2線のホーム構造は、当時の繁栄を物語っています。

しかし、時代の流れとともに林業の衰退や輸送形態の変化に伴い、1982年には貨物取扱いが、1984年には荷物取扱いが廃止されました。そして、1986年には無人化され、駅舎も改築されました。現在の駅舎は、簡素ながらも地域のシンボルとして、静かに時を刻んでいます。

駅名の由来は、所在地名である「咲来」に由来します。この地名はアイヌ語の「サクル（sak-ru）」に由来し、「夏の道」を意味するといわれています。かつては、咲来峠を越えてオホーツク海側へと至る重要な交通路があったことから、この名が付けられたと考えられます。

2020年12月には、JR北海道から音威子府村への維持管理移行が発表され、2021年4月より村による管理体制となりました。これは、地方の小さな駅が地域住民の手によって守り育てられている好例と言えます。

現在、咲来駅は単式ホーム1面1線の無人駅となっています。かつての賑わいはないものの、静かな佇まいの中に歴史を感じさせる、独特の雰囲気があります。駅周辺には、かつての日本通運の建物がライダーハウスとして利用されており、往時の面影を残しています。また、国道40号や天塩川も近く、自然豊かな環境に囲まれた駅です。

咲来駅は、宗谷本線美深駅と音威子府駅の間にある小さな駅ですが、その歴史と自然、そして地域住民の温かさを感じることができる、魅力的な場所です。北海道の秘境を旅する際には、ぜひ一度訪れてみてください。

駅データ
所在地：北海道中川郡音威子府村字咲来
事務管理コード：▲121829
電報略号：クル
駅番号：W60
隣の駅：美深駅 - 天塩川温泉駅 - 咲来駅 - 音威子府駅

周辺情報
国道40号
天塩川
音威子府村地域バス「咲来駅」停留所
ライダーハウス咲来（旧日本通運咲来営業所）

歴史
1912年（大正元年）11月5日：宗谷線延伸開業とともに開設
1982年（昭和57年）：貨物取扱い廃止
1984年（昭和59年）：荷物扱い廃止、駅員無配置化
1985年（昭和60年）：駅舎改築
1986年（昭和61年）：無人化
1987年（昭和62年）：JR北海道発足
2021年（令和3年）：音威子府村による維持管理開始

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