音威子府村

音威子府村（おといねっぷむら）

北海道上川地方の北部に位置する音威子府村は、旭川市と稚内市の中間にあたる丘陵地帯にあります。中川郡に属し、道内でも特に人口の少ない自治体として知られています。かつては1000人以下の地方公共団体として唯一でしたが、現在は他の地域も同様の状況となっています。

概要

「森と匠の村」を標榜し、豊富な森林資源を活かした工芸による村おこしを推進しています。村の特産品である「音威子府そば」は広く知られ、その独特の黒い麺は多くの人に愛されています。この村は、豊かな自然と、そこに根ざした独自の文化が共存する場所です。

地理

上川総合振興局管内の北部に位置し、南は美深町、西は中川町、北は宗谷総合振興局管内の中頓別町、東は同管内の枝幸町に接しています。天塩川が南から流れ、音威子府川と合流し、村域を貫流しています。国道40号とJR宗谷本線が天塩川に沿って走り、交通の要衝となっています。

村の中心部である音威子府は、音威子府川と天塩川の合流点にあり、国道40号と国道275号の分岐点となっています。かつてはJR天北線も通っており、日本海とオホーツク海、そして上川中央部を結ぶ交通の要衝でした。現在は鉄道は宗谷本線のみですが、その歴史は今も村の風景に刻まれています。

村の南東端には函岳があり、そこからクトンベツ沢川、ペンケサックル川、パンケサックル川などが西流し天塩川に合流しています。南部の咲来地区は平坦な地形が広がり、酪農や畑作が盛んに行われています。村の大部分は山林で、特に道有林が広範囲にわたっています。北部には北海道大学の研究林があります。

内陸性気候のため、夏と冬の寒暖差が激しく、特に冬は非常に寒くなります。夏は30℃近くまで上がり、冬は-30℃になることもあります。また、豪雪地帯であり、特別豪雪地帯に指定されています。1シーズンで10m以上の降雪があり、積雪は時に成人の平均身長を大きく上回ることもあります。

山と河川

山:
音威富士（439m）
函岳（1,129m）

河川:
天塩川
ペンケサックル川
パンケサックル川
音威子府川
物満内川
頓別坊川

隣接自治体

上川総合振興局
中川郡：中川町、美深町

宗谷総合振興局
枝幸郡：中頓別町、枝幸町

人口と高齢化

音威子府村は、若い世代の流出と高齢化という全国的な過疎問題に直面しています。特に、介護施設の不足から高齢者の転出が相次ぎ、人口減少に拍車をかけています。しかし、高齢化率が高いにも関わらず、介護保険料は道内でも最も安く、独自の対応を模索しています。

村では、特別養護老人ホームの建設を断念し、代わりに診療所やデイサービス施設と連携した公営集合住宅を建設し、高齢者の生活を支援しています。

年齢別の人口分布では、15～18歳にピークがありますが、これは村立北海道おといねっぷ美術工芸高等学校の学生が村外から多く入学しているためです。この学校は村の人口構成に大きな影響を与えています。

気候

音威子府村は、海洋性気候と盆地地形の影響を受け、寒暖差が非常に激しい地域です。夏は暑く、冬は厳しい寒さに見舞われます。また、日本有数の豪雪地帯であり、年間降雪量は12mを超えることもあります。過去には11月に135cmの積雪を記録したこともあり、これは道内でも非常に珍しい記録です。近年では、2021年に最高気温36.6℃を記録するなど、極端な気象現象も見られます。

村名の由来

村名はアイヌ語の「オトイネㇷ゚（o-toyne-p）」に由来し、「川口のにごっている川」または「川尻が泥んこである川」という意味があります。これは、音威子府川が天塩川に合流する地点が泥で濁っていたことに由来するとされています。

歴史

1797年の記録に初めて「ヲトヱ子フ」として登場しました。その後、松浦武四郎がこの地を訪れ、アイヌの人々と交流を深めました。武四郎は、アイヌ語の「カイ」という言葉に着想を得て「北加伊道」という名前を提案し、これが現在の「北海道」の由来となりました。

明治時代には、旭川からの道路建設が進み、1904年に現在の音威子府村域に到達しました。長村秀がこの地に定住し、村の開基となりました。鉄道の開通とともに、音威子府は交通の要衝として発展しましたが、国鉄の合理化や天北線の廃止により、人口は減少しました。

過疎化対策として、村は天塩川温泉やスキー場の整備、そして工芸の村としての活性化に取り組みました。村立高校を工芸科に転換し、地域資源を活かした村づくりを進めています。

経済と特産品

基幹産業は農業と林業です。特産品としては、以下のものがあります。

木工芸品: 村の豊かな森林資源を活かした工芸品。
音威子府そば: 独特の黒い麺が特徴で、多くの人に愛されています。
音威子府羊羹: 北海道産の原料を使った手作り羊羹。
おといねっぷ味噌: 北海道産材料を使用し、天然醸造した味噌。

その他にも、鮭みそパン、蜂蜜、山菜などが特産品として知られています。

金融機関と商業施設

村内には、JA北はるか音威子府支所、北星信用金庫音威子府支店があります。かつてはAコープがありましたが閉店し、現在はセイコーマートが営業しています。

公共機関

警察: 名寄警察署 音威子府駐在所
消防: 上川北部消防事務組合 音威子府支署

教育

高等学校: 北海道おといねっぷ美術工芸高等学校
小中学校: 音威子府村立音威子府小中学校（併置校）
大学研究施設: 北海道大学北方生物圏フィールド科学センター森林圏ステーション北管理部中川研究林

交通

鉄道:
JR北海道宗谷本線：天塩川温泉駅、咲来駅、音威子府駅、筬島駅

音威子府駅は特急停車駅で、日本一人口の少ない特急停車駅としても知られています。かつては天北線が分岐していましたが、1989年に廃止されました。

バス:
宗谷バス：都市間バス、音威子府村地域バス
デマンドバス：中頓別町・浜頓別町方面

道路:
国道40号、国道275号
北海道道12号、北海道道220号、北海道道391号

名所・旧跡・観光スポット

天塩川温泉
エコミュージアムおさしまセンター：砂澤ビッキのアトリエ。
北海道命名の地：松浦武四郎がアイヌの長老にアイヌ語の意味を尋ねた場所。

ゆかりのある有名人

砂澤ビッキ：彫刻家
吉田圭伸：クロスカントリースキー選手
蜂須賀明香：バイアスロン選手

音威子府村は、厳しい自然環境の中でも独自の文化を育み、訪れる人を魅了する場所です。豊かな自然と歴史、そして温かい人々との出会いが、この村の最大の魅力と言えるでしょう。

もう一度検索