国鉄色

国鉄色とは

国鉄色とは、日本国有鉄道（国鉄）およびその後のJR各社で採用された車両の塗装色の総称です。一般的には、国鉄時代に全国的に使用された塗装を指すことが多く、末期に登場した地域ごとのカラーリングは区別される傾向があります。ただし、青緑1号のように一部例外も存在し、明確な基準があるわけではありません。

国鉄色の歴史

戦前

戦前は、蒸気機関車は黒色、客車はぶどう色1号、電気機関車や電車はぶどう色2号が一般的でした。これは、煤煙による汚れを目立たなくするため、また塗装コストを抑えるためと考えられていました。一方、気動車は1935年以降、藍青色と灰黄色の塗り分けが採用され、当時としては珍しい軽快な色使いでした。また、京阪神地区の急行用電車モハ52形は、クリーム色と茶色の塗り分けが特徴的でした。

戦後

戦後、1948年には山手線と京浜東北線の誤乗防止のため、山手線用電車が緑色に塗られましたが、車両の転属などにより混乱が生じ、すぐに元の塗装に戻されました。

多色化の始まり

1950年代に入ると、国鉄車両の塗装は多色化が進みました。湘南電車80系には、緑2号と黄かん色の2色塗りが採用され、「湘南色」として親しまれるようになりました。これは、アメリカの鉄道車両の塗装を参考に、高速走行に適した警戒色であるオレンジ色を取り入れたものです。また、横須賀線では青2号とクリーム2号の「横須賀色（スカ色）」が採用され、海沿いの風景をイメージした色として宣伝されました。さらに、京阪神地区では、濃いクリーム色とマルーンの2色塗りが採用され、関西急電のイメージカラーとなりました。

1956年には、東海道本線の全線電化をPRするため、特急「つばめ」「はと」の車両に淡緑5号一色の塗装が施され、「青大将」と呼ばれました。また、通勤形電車では、1957年に中央線に投入された101系にオレンジバーミリオンが採用され、その後、路線ごとにカナリアイエローやウグイス色などのカラーが制定され、現在のラインカラーの基礎となりました。

国鉄車両関係色見本帳の作成

1950年代には、車両に使用される色が増えたため、国鉄は1956年に「国鉄車両関係色見本帳」を作成しました。これにより、車両の色をマンセル記号で表現することが可能になり、塗装の時期や工場による色合いの差異をなくすことができました。この見本帳に掲載された色は「何色何号」と呼ばれるようになり、国鉄の標準色として扱われました。

用途別の塗色標準化

国鉄車両の塗装は、次第に用途別に標準化されるようになりました。これにより、全国各地で同じ色の車両が走るようになり、車両の個性は薄れていきました。

特急形車両の塗色

1958年に登場した特急「こだま」用の151系電車では、クリーム4号に窓部分に赤2号を巻いたデザインが採用され、これが後の「国鉄特急色」の始まりとなりました。また、20系客車では、青15号地にクリーム1号の細帯を3本巻いた「ブルートレイン色」が採用され、寝台特急のイメージを確立しました。

修学旅行用車両の塗色

1959年に登場した修学旅行用155系電車は、窓周りを黄色、腰板幕板を朱色とした独特のカラーリングで、他の国鉄車両とは異なる異彩を放っていました。しかし、1977年の国鉄色の色数整理に伴い廃止されました。

電源方式別の塗色

1958年に登場した153系電車は、直流電化区間を走行することから「湘南色」が採用されました。また、新性能直流電気機関車は、青15号地にクリーム1号の前面警戒色が標準色となりました。

1959年に登場したED70形交流電気機関車では、赤2号の外板色が初めて採用され、交流型電気機関車・電車の標準色となりました。交流直流両用電車では、赤13号の外板色が採用され、後にクリーム4号との組み合わせが標準となりました。

気動車の塗色

気動車では、1956年に登場したキハ55系気動車で、クリーム2号地に赤2号の細帯という2色塗りが採用されました。また、1958年には、急行色としてクリーム4号に赤11号の帯を巻いたデザインが採用され、一般形気動車では、1959年にクリーム4号と朱色4号の2色塗りが標準となりました。1976年には、首都圏での省力化のため、朱色5号一色に統一され、「首都圏色」と呼ばれました。DD51形ディーゼル機関車では、朱色4号をベースに屋根上を灰色、境目に白帯を配した塗装が標準となりました。

大阪地区の独自性

大阪地区では、他の地域とは異なる独自の塗装を採用することが多くありました。1972年には、新快速用としてシルバーグレーにスカイブルーの帯を巻いた塗装が設定され、阪和線や関西線にも同様の塗装が波及しました。

私鉄への影響

国鉄に車両を乗り入れさせていた私鉄や、国鉄から払い下げを受けた鉄道会社では、国鉄と同じ塗装を採用するケースが多く見られました。

地域別の色へ

1970年代後半になると、国鉄再建において地域密着経営が重視されるようになり、地域に応じたカラーリングの車両が登場しました。1979年に登場した117系電車では、関西急電色を彷彿させるデザインが採用され、福塩線や身延線では、それぞれ異なるカラーリングの車両が登場しました。特急形でも、185系電車では、クリーム10号地に緑14号の斜めストライプという斬新なデザインが採用されました。気動車においても、相模線ではクリーム1号地に青20号の帯というデザインが採用されました。

リバイバルカラー

JR化後、地域カラーが増えたことや、国鉄形車両の淘汰が進む中で、国鉄色の人気が高まりました。そのため、JR各社では、地域カラーに変更した車両を再び国鉄色に戻す例が現れるようになり、JR発足後に登場した車両でも国鉄色に塗装変更される例も見られます。この動きは私鉄にも影響を与え、旧塗装の復活が行われるようになっています。

まとめ

国鉄色は、日本の鉄道史において重要な役割を果たした塗装です。その歴史を振り返ることで、当時の鉄道事情や技術革新、地域文化などを知ることができます。また、リバイバルカラーとして復活していることは、多くの人々に愛されている証拠と言えるでしょう。

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