均衡

経済学における均衡（Equilibrium）

経済学における「均衡」とは、一般的に釣り合いがとれた状態を指し、特に市場における需給のバランスが取れた状態を指します。しかし、経済学的な均衡は、単なる静的な状態ではなく、動的なプロセスを含む概念として理解する必要があります。

均衡の定義

経済学における均衡は、以下の条件を満たす状態として定義されます。

主体の合理的な行動: モデル内の各主体（消費者、企業など）が、明確に定義された仮定に基づいて行動します。通常は効用最大化や利潤最大化が仮定されます。
意思決定の整合性: 各主体の意思決定が、他の主体の意思決定と整合的である必要があります。例えば、ある財の供給量と需要量が等しくなることが挙げられます。

均衡は、財の価格や配分が時間を通じて一定である必要はなく、資本の蓄積速度が一定となる状態も含まれます。

部分均衡と一般均衡

部分均衡: 特定の市場だけを取り上げ、他の市場は一定不変とした場合の均衡です。例えば、ある特定の商品の価格が、その商品の需要と供給によって決定される場合などが該当します。
一般均衡: 社会全体の人口、技術、嗜好、生産組織等すべての市場において均衡となった状態です。一般均衡分析では、すべての市場が相互に影響しあうことを考慮に入れます。

マーシャルの均衡分析

アルフレッド・マーシャルは、時間区分と市場の広さの違いによる均衡関係を分析しました。彼は、一時的均衡、短期均衡、長期均衡という3つの概念を提唱し、現実の市場における均衡を捉えようとしました。

1. 一時的均衡: 最も短期的な均衡で、市場に出荷された生鮮食料品の需給のように、供給量が一定で、これに需要曲線が交わって価格が得られる状態です。
2. 短期均衡: 資本設備が一定の下で、生産者が操業度を上げて生産量を増減させることによって得られる均衡です。
3. 長期均衡: 資本設備の変化を考慮に入れた条件の下で成立する均衡です。生産者は、より有利な市場を求めて設備投資を行い、生産量の拡大を図ります。

マーシャル体系は、時間と空間の中で動く社会を捉え、一方の均衡が他方の不均衡を生み、その均衡化への動きが、他方の不均衡化を生むという動的なプロセスを重視しました。

均衡の種類

均衡には、様々な種類があります。

異時均衡: 昨年の生産量が今年の需要量と均衡関係を持つなど、時間的なずれを考慮した均衡です。
静学均衡: 時間を全く含まない均衡です。
動学均衡: 均衡諸量が時間と共に動いていく均衡です。

また、均衡状態からのずれに対する安定性も重要な概念です。

安定均衡: 均衡値から離れたとき、均衡値に戻る傾向を持つ均衡です。
不安定均衡: 均衡値から離れたとき、さらに離れていく均衡です。

安定性分析は、均衡が実際に成立しうるかどうかを考察する上で重要な役割を果たします。

均衡概念の重要性

均衡概念は、経済学の基礎であり、様々な経済現象を理解するための基盤となります。市場の価格決定、資源配分、経済政策の効果など、幅広い分析において均衡概念が用いられています。

参考文献

A. Marshall, Principles of Economics, 9ed., 2vols, 1961.
L. Walras, Elements d'economie politique pure, 1874-77.
P. A. Samuelson, Foundation of Economics Analysis, 1947.

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