堀之内軌道

堀之内軌道の概要

堀之内軌道（ほりのうちきどう）は、静岡県にかつて存在した軽便鉄道です。路線は、堀之内町（現在の菊川市）の東海道本線堀ノ内駅（現在の菊川駅）から池新田村（現在の御前崎市）を結ぶもので、内陸地域と海岸部を繋いでいました。設立当初は馬車鉄道として開業し、その後の発展を目指しましたが、様々な理由から計画は実現しませんでした。

設備と運行

本社および車庫は堀之内町にあり、軽便鉄道は当初から簡素な駅や施設で運営されていました。開業から数年後には橋梁やトンネルも整備されましたが、第一次世界大戦の影響で石炭価格が高騰し、蒸気鉄道への転換を断念しました。また、電気鉄道への転換も多額の投資が必要であったため実行されず、最終的には小型ディーゼル機関車が導入されました。この機関車は、地元の松下工場と提携し、日本の初期におけるディーゼル機関車の実用例となりました。特に、「オット機関車」として親しまれた機関車は、ドイツから輸入されたもので、横置単気筒のエンジンを搭載していました。

繁栄と廃止

堀之内軌道は地元の茶業や軍需産業の発展に寄与しましたが、自動車の普及により利用者が減少し、1935年に廃止されることとなります。また、併用軌道区間が多かったため、駅や設備は簡素であり、大規模な廃止後その名残はほとんど消えてしまいました。現在は、しずてつジャストラインのバス路線（菊川浜岡線）がほぼ同じ区間を運行しています。

路線データ

1935年12月に廃止された段階での路線データは以下の通りです。

• - 路線距離（営業キロ）：14.8km
• - 軌間：762mm
• - 複線区間：なし（全線単線）
• - 電化区間：なし（全線非電化）

使用された車両は以下のように分類されます。

• - 機関車:

- 1号機関車は、Motorenfabrik Deutz AG製で出力14馬力のエンジンを搭載し、客車の牽引には使用されませんでした。
- 2-5号機関車は同じくドイツ製で、22馬力および28馬力のディーゼルエンジンが搭載されていました。

• - 客車:

- 1・2号客車はボギー客車で、定員34名（座席24、立席10）でした。
- 3・4号客車はボギー荷物合造客車で、定員24名、5・6号客車は4輪客車で、定員10名でした。

歴史的な側面

堀之内軌道は1897年に特許を取得し、1899年に開業を迎えました。1917年には御前崎軌道に社名を変更し、その後もさまざまな事業を展開しようとしました。1921年には軌道事業が堀之内軌道運輸に譲渡され、その後静岡電力に合併されるなど、歴史の変遷を経ていきました。

現在の状況

現在、堀之内軌道の名残を感じることは少なくなっていますが、唯一残る佐栗谷隧道は当時の面影を残しています。隧道は全長93.3mで、両端は煉瓦作りの構造で現在も確認できます。駅周辺には「オットのみち」と呼ばれる道路標識も設置され、歴史を物語っています。

このように堀之内軌道は、静岡県の歴史において一時代を築いた重要なインフラでした。

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