多胎児

多胎児（たたいじ）について

多胎児とは、一人の母親から同時に生まれる複数の子供たちのことです。一般的には双子（ふたご）、三つ子、四つ子などを指しますが、特に三つ子以上を意識して使われることが多い言葉です。多胎児は、その発生のメカニズムや出産、育児において、単胎児とは異なる様々な特徴や課題を抱えています。

多胎児の種類

多胎児は、胎児の数によって以下のように呼ばれます。

双胎（そうたい）: 胎児2人（英語: twins）
品胎（ひんたい）: 胎児3人（英語: triplets）
要胎（ようたい）: 胎児4人（英語: quadruplets）
周胎または格胎（しゅうたい、かくたい）: 胎児5人（英語: quintuplets）
六胎: 胎児6人（英語: sextuplets）
七胎: 胎児7人（英語: septuplets）
八胎: 胎児8人（英語: octuplets）
九胎: 胎児9人（英語: nonuplets）
十胎: 胎児10人 (英語: decuplets)
十一胎: 胎児11人 (英語: undecuplets)
十二胎: 胎児12人 (英語: duodecuplets)
十三胎: 胎児13人 (英語: tridecuplets)
十四胎: 胎児14人 (英語: quadecuplets)
十五胎: 胎児15人 (英語: quindecuplets)

「品」「要」「周」といった漢字は、その字に含まれる「口」や四角形に仕切られた空間の数を、子の数に見立てたものです。

多胎児の卵性

多胎児には、一卵性と多卵性の組み合わせによって様々なパターンがあります。

一卵性多胎児

一つの受精卵が分裂して複数の胎児になる場合です。まれに、受精卵の分裂が複数回繰り返され、一卵性三つ子、一卵性四つ子などが生まれることがあります。

多卵性多胎児

複数の卵子が同時に受精して複数の胎児になる場合です。二卵性双生児のように、それぞれ別の受精卵から生まれてくる多胎児が該当します。

品胎（三つ子）の卵性

一卵性三つ子: 一つの受精卵が二度にわたって分裂してできた三つ子。
二卵性三つ子: 二つの受精卵からできた三つ子。この場合、二つの卵子のうち一つが一卵性双生児となります。
三卵性三つ子: 三つの異なる卵子がそれぞれ受精してできた三つ子。

要胎（四つ子）の卵性

四つ子も同様に、一卵性から四卵性のケースがあります。一卵性の四つ子が生まれるためには、受精卵が複数回分裂する必要があります。例えば、一つの受精卵がまず二つに分裂し、さらにそのうちの一つが二つに分裂、そして残りの一つが分裂するというように、複雑な分裂過程を経て生まれてきます。

多胎児の出生頻度

多胎児の出生頻度は、単胎児に比べて低いものの、近年では生殖補助医療の影響で増加傾向にあります。厚生労働省の調査によると、2007年の全出生数に占める複産による出生児の割合は約2.2%でした。複産の多くは双胎ですが、三つ子以上の多胎児の出生率はさらに低くなります。

ヘリンの法則

多胎妊娠の発生率を予測する経験則として、ヘリンの法則があります。この法則によれば、多胎妊娠の発生率は「89の(n-1)乗分の1」で表されますが、これは自然妊娠による多胎妊娠発生率の近似値であり、近年では生殖補助医療の影響でこの法則から逸脱する傾向にあります。

多胎妊娠の発生頻度の増減

1980年代から多胎妊娠の発生率は上昇してきましたが、近年では特に三つ子以上の高次多胎児の出生数は減少傾向に転じています。これは、生殖補助医療の技術向上や、多胎妊娠のリスクに対する認識が高まったことが影響していると考えられます。

多胎妊娠と多胎児の発達における問題

多胎妊娠は、母体への負担が大きく、妊娠高血圧症候群などのリスクも高まります。また、早産や帝王切開になる可能性も高く、NICU（新生児特定集中治療室）を備えた病院での診察が推奨されます。

発育の問題

多胎児は、子宮内のスペースや栄養供給が限られるため、発育遅延や低出生体重になりやすい傾向があります。多胎妊娠では、胎児の栄養状態や発育が十分でない場合、一部の胎児を人工的に堕胎させる減数手術を選択せざるを得ない場合もあります。

育児の問題

多胎児の育児は、単胎児に比べて労力が大きくなります。また、多胎児は発育や言語能力に遅れが見られることもあり、母子保健上のリスクも高いとされています。

多胎妊娠の記録と実例

最大多胎数

記録上、確認されている最大多胎数は十五胎ですが、出産には至りませんでした。出産に至った最大多胎数は十胎です。また、九つ子が全員生存した例も確認されています。

著名な多胎家族

キーズ家の四つ子姉妹
ディオンヌ家の五つ子姉妹
ローゼンコウィッツ家の六つ子
山下家の五つ子
ジャンニーニ家の六つ子
ウォルトン家の六つ子姉妹
マッコイ家の七つ子
チュークー家の八つ子
スールマン家の八つ子
* シセー家の九つ子

多胎児の兄弟姉妹と出生順

多胎児の兄弟姉妹の順位は、生まれた順番で決まります。かつては後から生まれた方を兄姉とする慣習もありましたが、現在では出生順に兄弟姉妹が定められています。

重複子宮と多胎児

母体が重複子宮（双角子宮）の場合、それぞれの子宮で同時に受胎し、多胎妊娠になることがあります。また、受胎時期が異なることで、出産時期にずれが生じることもあります。

一卵性多胎児と指紋

多胎児の数が増えるほど、指紋の一致率は低下します。これは、子宮内環境の多様性が大きくなることで、環境要因の影響が拡大するためと考えられます。

多胎児サークル

多胎児を育てる親たちが情報交換や交流を行う場として、各地に多胎児サークルが存在します。公的なものから私的なものまで、様々な形態があります。

まとめ

多胎児は、その発生のメカニズムから出産、育児に至るまで、多くの特別な側面を持っています。多胎妊娠は母体に大きな負担を強いる一方で、複数の命が同時に誕生するという喜びをもたらします。多胎児に関する正しい知識と理解を持つことが、彼らの成長と発達を支えるために不可欠です。

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