大丸神戸店

大丸神戸店：神戸の歴史と発展を語る百貨店

大丸神戸店は、兵庫県神戸市中央区に位置する、J.フロントリテイリング傘下の大丸松坂屋百貨店が運営する百貨店です。神戸の中心市街地である三宮・元町地区に立地し、その売上高は神戸市内トップクラスを誇り、神戸阪急を上回る地域一番店として知られています。2021年3月から2022年2月までの営業実績では、大丸ブランド全体の中でも大丸心斎橋店を上回る売上高を達成しました。

歴史：神戸と共に歩む百年以上

大丸の兵庫県への進出は、1819年（文政2年）に京都から出張した店員が宿屋を間借りして顧客回りを始めたことに始まります。その後、現在の兵庫区鍛冶屋町に兵庫店を開設しましたが、その正確な時期は不明です。当初は大阪店からの出張所のような形で営業していました。

幕末の開港以降、神戸は川崎造船所の操業開始や東海道本線の全線開通、神戸市の市制施行などによって発展を遂げました。大丸はこうした神戸の発展を背景に1908年（明治41年）、元町4丁目に神戸店を開設。当初は木骨コンクリート造り2階建ての小型店でしたが、兵庫県以西で初めての百貨店として、大きな注目を集めました。

大正時代に入ると、神戸は好景気に沸き、神戸店の売り上げも大幅に増加しました。1913年には出張所から支店に昇格し、その後も増築を繰り返しながら規模を拡大していきました。1927年には、旧居留地の明石町に地下1階地上7階建ての新店舗がオープン。その後も周辺土地を取得して拡張し、1936年には地下2階地上7階（一部8階）の新館が完成しました。

第二次世界大戦中は、戦時体制の影響を受け、一部建物が供出されたり、工場として使用されたりしました。1945年の神戸大空襲では、周辺地域が焼け野原になるほどの被害を受けましたが、大丸神戸店も被災しました。戦後、進駐軍による接収を経て、徐々に営業を再開し、復興に向けて歩み始めました。

戦後の高度経済成長期には、ラジオ広告や電光掲示板の設置など、積極的な広告宣伝活動を行い、売上を伸ばしていきました。1968年には全館改装を実施し、高さ16.5mの立体ショーウィンドウは神戸店の象徴となりました。また、1971年には大規模増築を行い、神戸市内で最大規模の百貨店となりました。その後も、新長田店や須磨店、芦屋店などを展開し、地域に密着した事業展開を行いました。

1980年代には、三宮地区が神戸の商業の中心地として発展する一方、元町地区は停滞しました。大丸神戸店も売上高でそごう神戸店に抜かれましたが、1987年に大規模な改装を行い、若い女性客を取り込むことで再び人気を取り戻しました。1993年には南側に増築を行い、神戸市内で最大の百貨店となりました。

1995年の阪神・淡路大震災では、旧館に大きな被害を受けましたが、従業員一同の努力により、震災から776日後に全面営業を再開しました。震災からの復興は、地域社会への貢献という点でも大きな意義がありました。

2000年代以降も、神戸市営地下鉄海岸線の開通や大規模な改装などを経て、現在に至っています。

建築：歴史と現代が調和するデザイン

1936年に完成した旧店舗は、村野藤吾の設計によるものでしたが、阪神・淡路大震災で大きな被害を受け、解体されました。再建された現在の店舗は、洋風のデザインで、地下2階地上10階建てです。地下には化粧品や食品売り場、地上階には婦人服、紳士服、子供服、リビング用品、宝飾品など、多様な商品が取り揃えられています。9階には美術館やレストラン街があり、屋上には庭園やビアガーデンもあります。また、旧居留地の歴史的景観に配慮した周辺店舗も展開しています。

業績：神戸経済を支える存在

2021年3月から2022年2月期の大丸神戸店の売上高は701億60百万円にのぼります。これは、大丸ブランド全体の中でもトップクラスであり、神戸市内の百貨店の中でもトップレベルの売上高です。

大丸神戸店は、長い歴史の中で神戸と共に発展を続け、地域経済に大きく貢献してきた百貨店です。これからも神戸のランドマークとして、地域社会に貢献していくことでしょう。

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