大須観音

大須観音

大須観音（おおすかんのん）は、愛知県名古屋市中区大須に位置する真言宗智山派の別格本山であり、地元では「宝生院」とも呼ばれていますが、一般的には「大須観音」という名前でお馴染みです。この寺院は、国内三大観音の一つとして広く知られ、また名古屋七福神の一である布袋尊を安置しています。さらに、寺院内には『古事記』の最古写本を含む多くの貴重な書籍を保管している「真福寺文庫」が存在します。

歴史

大須観音は、1190年から1199年の建久年間に尾張国中島郡長庄大須（現在の岐阜県羽島市）に誕生した中島観音がその起源とされています。1324年には後醍醐天皇によって北野天満宮が創建され、その2年後の1333年には、僧能信によって別当寺として真福寺が設立されました。真福寺の本尊は摂津国四天王寺から移された観世音菩薩で、当時から特別な地位を持つ寺院として発展を遂げました。

後村上天皇の時代には、伽藍が確立され、勅願寺としての地位を強化しました。特に、3代目住職である任瑜法親王の時代には寺の領地が1万石に達し、伊勢、美濃、尾張、三河、遠江、信濃の6カ国に広がる真言宗寺院の末寺を持つほどに成長しました。この時期、戦国時代には織田信長からも寺領500石が寄付され、徳川家康の命令で1612年に現在地に移転しました。

文化12年（1815年）には五重塔が建立され、空海が彫った愛染明王像がその中に安置されました。しかし、1892年の大須の大火により本堂、五重塔、仁王門が焼失し、その後も再建が続けられました。1939年には名古屋大空襲により再び焼失し、1949年に仮の本堂と仁王門が建設されましたが、資金的な問題から長く本堂の再建が遅れていました。1970年になって、ようやく鉄筋コンクリート造の本堂が完成し、以後も大須観音は地域の重要なシンボル寺院としての地位を維持しています。

開山能信上人

開山能信上人は1291年に伊勢国で生まれ、1312年には禅学と密教の教典を受け継ぎました。1343年には後醍醐天皇に帰依し、真福寺を開山しました。彼は1355年に入寂し、その後も多くの信仰を集める存在でした。

境内と文化財

大須観音の境内には、本堂や普門殿、鐘楼などの重要な建物が存在し、1966年には鐘楼が再建され、特に「華精の鐘」とも呼ばれる梵鐘が著名です。真福寺文庫は、約15,000冊もの古典籍を所蔵し、特に『古事記』の真福寺本は国宝に指定されています。

また、重要文化財には多くの古典資料が含まれ、国宝として高い価値を持つ書籍も多数保管されています。例えば、漢書や琱玉集、古事記の写本などがあり、書誌学的にも重要な意味を持つものとされています。

アクセス

大須観音へは、名古屋市営地下鉄鶴舞線の大須観音駅から徒歩でアクセスでき、名古屋市営バスも利用可能です。周囲には地域の人々に親しまれ続ける観光地としての顔も持ち、国内外から参拝者が訪れています。このように、歴史ある大須観音は名古屋市の重要な文化遺産であり、多様な魅力を持つ場所です。

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