天文館シネマパラダイス

天文館シネマパラダイスは、鹿児島県鹿児島市東千石町のLAZO表参道内にある映画館です。7つのスクリーンを持つシネマコンプレックスとして、地域の人々に映画鑑賞の場を提供しています。運営は株式会社天文館が行い、略称は「天パラ」として親しまれています。

歴史

天文館の映画館街

天文館は、戦前から映画館が集まる場所として知られていました。1945年の鹿児島大空襲で全て焼失しましたが、1947年までには5つの映画館が再建され、賑わいを取り戻しました。1953年には、鹿児島市内に9つの映画館があり、その全てが天文館に集中していました。最盛期を迎えた1960年には、天文館には16もの映画館が存在し、映画評論家の寺脇研氏も、この地で数多くの映画を鑑賞したと語っています。

しかし、テレビの普及や郊外化の影響で映画業界は衰退し、1972年には鹿児島県の映画館数は最盛期の半分にまで減少しました。1999年には、鹿児島県内で映画館があるのは鹿児島市のみとなり、天文館には5つの施設、計12のスクリーンが残っていました。

天文館からの映画館の消滅と復活

2004年、JR鹿児島中央駅前にシネマコンプレックス「ミッテ10」が開業したことがきっかけで、天文館の映画館は苦境に立たされます。2006年には、天文館にあったシネシティ文化が閉館し、さらにTOHOシネマズ与次郎の開業に伴い、鹿児島東宝も閉館。これにより、一時的に天文館から映画館が姿を消すこととなりました。

その後、2010年にミニシアター「ガーデンズシネマ」がオープンし、約4年ぶりに天文館に映画館が復活しました。このミニシアターは、自主上映団体「鹿児島コミュニティシネマ」によって運営されています。

天文館シネマパラダイスの開館

ガーデンズシネマの開館前から、天文館の商店街主導でシネマコンプレックスを復活させる計画が進められていました。そして2012年、複合商業施設LAZO表参道のオープンとともに、3階から5階に7つのスクリーンを持つ「天文館シネマパラダイス」が開館しました。この名称とロゴマークは公募によって決定されました。

開館当初は、『タイタニック 3D』や『スター・ウォーズエピソード1/ファントム・メナス|スター・ウォーズエピソード1_ファントム・メナス 3D』など話題作が上映されました。また、過去の名作を再上映する企画も行われ、多くの観客を魅了しました。

しかし、開館当初の集客は目標に届かず、苦戦を強いられました。認知度は高いものの、実際に利用した人の割合は伸び悩みました。また、JR鹿児島中央駅前のシネコンと比較して、交通の便や上映作品の質に課題があるとも指摘されました。しかし、天文館シネマパラダイスの開業は、周辺地域の歩行者増加や空き店舗減少といった波及効果をもたらしました。

特色

運営

天文館シネマパラダイスの建設には約16億円の事業費がかかり、そのうち約5億9000万円が国や鹿児島市からの補助金で賄われました。運営は株式会社天文館が行い、番組編成はTOHOシネマズが担当しています。税金が使われていることや、衰退した商店街に映画館を再開させることには、開館前から賛否両論がありました。

上映作品は、邦画や洋画の大作だけでなく、鹿児島県では上映機会の少ない単館系作品やアート系作品も積極的に上映しています。また、洋画においては字幕版の上映に力を入れているのも特徴です。

設備

ロビーは茶色を基調とした落ち着いた雰囲気で、薩摩切子をイメージした内装が施されています。ホール内の座席は黒色で統一され、ドリンクホルダー付きの肘掛けが備え付けられています。売店では、ポップコーンやドリンク、軽食などが販売されており、自動券売機も設置されています。また、ブランケットやチャイルドシートの貸し出しサービスも行っています。

スクリーンによっては、最後部にプレミアムシート（ソファ型座席）が設置されており、カップルでの映画鑑賞にも人気です。

サービス

天文館シネマパラダイスでは、様々な割引サービスが提供されています。毎月1日、10日の「ファーストデイ」「テンパデイ」や、毎週水曜日の「レディースデイ」、シニア割引、夫婦割引、レイトショー割引など、お得に映画を楽しめるサービスが充実しています。

また、LAZO表参道と大型駐車場セラ602は地下道で直結しており、雨天時や火山灰の多い日でも濡れずに映画館へアクセスできます。天文館の商店街の提携店舗では、映画の半券を提示すると様々な特典を受けることができます。

基礎情報

所在地：鹿児島県鹿児島市東千石町19-1 LAZO表参道3階-5階
アクセス：鹿児島市電「天文館通」または「いづろ通」電停下車徒歩約5分、鹿児島市営バス「天文館」バス停下車徒歩5分

脚注

[脚注1]

参考文献

ガーデンズシネマ部『39席の映画館いつもみんなで映画をみて』燦燦舎、2016年
唐鎌祐祥『かごしま映画館100年史』南日本新聞開発センター、2017年
斉藤悦則「鹿児島の映画環境」『鹿児島県立短期大学地域研究所研究年報』鹿児島県立短期大学、第41号、2009年

外部リンク

 天文館シネマパラダイス
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