天正大判

天正大判の詳細と特徴

概要

天正大判は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけて鋳造された金貨で、主に豊臣家が金細工師の後藤四郎兵衛家に鋳造を依頼していました。初鋳は天正16年（1588年）で、この時期に作られた大判は主に三種類に分類されます。それらは、天正菱大判、天正長大判、そして大仏大判です。

量目と特徴

天正大判の基準量目は金一枚、すなわち京目拾両（約44匁）ですが、実際には加工時の減量や磨耗を考慮して定義された量目は四十四匁二分です。表面は槌目という特有の仕上げが施されており、これが天正大判の大きな特徴となっています。江戸時代に入っても、慶長大判と一緒に流通していたと考えられており、元禄8年（1695年）にその鋳造は停止しました。

天正菱大判

天正菱大判は、表面の中央に「拾両後藤（花押）」と年号「天正十六」などが墨書されています。菱形の枠に桐の極印が上下に打たれていることからこの名が付けられています。また、裏面には極印はなく、中央下部には埋め金が施されています。この大判は後の長大判と量目は同じですが、形は小さい楕円形です。年号には「天正十七」や「天正十九」のものも存在するものの、現存数は非常に少なく、主に貨幣博物館や造幣博物館に展示されています。

天正長大判

続いて天正長大判ですが、こちらは表面に墨書きとして「拾両後藤（花押）」があり、年号の表示はありません。四つの丸枠桐極印が打たれているのが特徴です。特筆すべき点は、そのサイズで、縦が17センチメートル以上とされ、特に大きな大判の一つです。この大判は炭鉱や商取引で利用されたとされ、鋳造高は1597年までに約三万枚と推定されています。

大仏大判

最後に大仏大判ですが、形式としては長大判と同じく「拾両後藤（花押）」の墨書があります。特に、この大判は豊臣秀頼が京都の方広寺大仏の再建資金のために鋳造されたとされています。鋳造期間は慶長13年10月から17年1月までであり、これは徳川家康が秀頼の蓄財を消費させる意図で行われたと考えられています。この大仏大判は現存数が最も多く、非常に興味深い歴史的背景を持っています。

結論

これらの天正大判は、豊臣家や日本の貨幣制度の歴史を理解する上で非常に重要な役割を果たしています。それぞれの大判には独特な特徴と背景があり、当時の金銭物流や経済動向を知る手がかりとなります。貨幣そのものが持つ歴史的意義を考慮することは、私たちの文化を深く理解するためにも重要な視点です。

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