天流

天流（てんりゅう）

天流は、斎藤伝鬼房が創設した武術の流派で、剣術、槍術、薙刀術、鎖鎌術、棒術、手裏剣術、そして柔術の一種である取手・小具足を含む多岐にわたる技術を学ぶことができます。この流派は、その伝承される内容が体系によって異なる点が特徴です。

歴史

斎藤伝鬼房の出身地は、現在の茨城県桜川市の常陸国真壁郡井手とされています。彼は最初に塚原卜伝に新当流を学びましたが、1581年に鎌倉の鶴岡八幡宮で夢の中に剣の技が記された巻物を天から授かり、これを契機に天流を名付けたと言われています。

伝鬼房は塚原卜伝の弟子とされ、「天流正伝新当流」という系統もあったことから、天流は新当流を基にした流派であると考えられています。また、天流の伝書『天流諸目録』には、新当流の極意のほか、有馬新当流や京流、新陰流、当流、陰流、一羽流など、多数の技が記載されており、このことが伝鬼房が多様な流派の技を学んでいた証拠とされています。

この伝書は、斎藤伝鬼房が設立した年の1581年に斎藤摂津守定盛に渡され、仏教の思想が色濃く反映されている点も特徴的です。伝鬼房はその後、諸国を巡り、京都でも演武を行い、多くの人々の目に留まったとされますが、その信憑性は江戸時代の文献にのみ記載されているため、他の資料との確認が取れていません。

伝鬼房は故郷に戻った後、下妻城主・多賀谷重経をはじめとする多くの弟子に武術を教えましたが、神道流の桜井霞之助を試合で倒したことで恨まれ、1587年に桜井の弟子たちによって命を奪われてしまいます。

系譜の変遷

斎藤伝鬼房の後、彼の子である第2代の斎藤法玄が流派を引き継ぎ、多くの弟子を育てました。法玄の弟子の斎藤牛之助が第3代となりましたが、江戸に出奔してしまったため、牛之助の兄弟弟子である人見熊之助が第4代の地位を引き継ぎます。人見熊之助は、自身の流派である人見流棒術や人見流馬術の創始者としても知られており、加古流の開祖である加古正真を輩出しています。

また、江戸に出た斎藤牛之助の弟子である日夏重能は槍術の専門家で、近江に戻って天流を広めました。重能の息子である日夏能忠は、父から天流の新たな系統を引き継ぎ、斎藤と人見の系を組み合わせていきました。日夏能忠の弟子である下河原恭長は天道流へと改変し、丹波亀山藩で剣術の師範として活動しました。この家系は明治初期まで剣術を伝承していました。

その一方で、伝鬼房の弟子の伊地知重明は天流を大隅に伝え、その系統は無山天流と呼ばれ、薩摩藩の一門である垂水島津家に伝わりました。

江戸時代には、天流は丹波亀山藩や薩摩藩に限らず、仙台藩、秋田藩（秋田藩からは新天流が分派）、会津藩、水戸藩、彦根藩、赤穂藩、中津藩など、さまざまな地域に広まったことが記録されています。

天流から分派した流派には、新天流、島崎新天流、真天流、加古流などが存在します。しかし、これらの中で現存しているのは天道流のみです。

系譜

斎藤判官傳鬼房
斎藤法玄
人見熊之助
斎藤右兵衛
加古利兵衛正真
細野六左衛門吉次
村上權左衛門
日夏彌助能忠
斎藤牛之助
日夏喜左衛門重能
日夏彌助能忠
小松一卜斎
月岡一露斎
菊地清太夫

関連項目

* 天道流

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