奥村源六

奥村源六（おくむら げんろく）は、江戸時代中期に活躍した浮世絵師にして版元です。生没年を含め、その生涯については詳細な記録が残されておらず、謎に包まれた人物の一人と言えるでしょう。

現在の研究では、奥村政信との何らかの関係があったと推測されています。諸説ありますが、政信の子、養子、あるいは兄弟といった可能性が挙げられています。確実な証拠がないため、その正確な続柄は未だ解明されていません。

源六の作風は、奥村政信の影響を強く受けているとされています。現存する作品は少ないながらも、墨摺筆彩色の横判や細判、そして紅絵の作品が確認されています。これらの作品は、多くが和泉屋権四郎版として版行されました。現存する作品点数は10点程度と推測されており、その希少性から、彼の作品は浮世絵研究においても重要な資料となっています。

落款には「大和絵師」と記されることが多く、大和絵の伝統を踏まえた画風であったことがうかがえます。享保期の前中期に制作活動が活発だったと推測され、その作風は繊細かつ優美で、当時の世相や風俗を巧みに表現していると考えられます。

版元としての活動も注目に値します。享保期に奥村政信（源八）が通塩町に開設した地本問屋「奥村屋」（鶴寿堂）を継承し、二代目奥村屋として営業を続けました。天明頃まで版元として活躍したと推測されており、奥村政信の紅絵や漆絵、奥村利信の漆絵、鳥居清満や北尾政演といった人気絵師の錦絵なども版行していたと記録されています。これにより、源六が当時の浮世絵界において、重要な役割を担っていたことが分かります。

現存する作品としては、「うき世きぬたうち」（横中判墨摺筆彩）、「見立芥川」（横中判墨摺筆彩）などが知られています。「うき世きぬたうち」には題名のない異版も存在するようです。「市川門之助」（細判漆絵、江見屋版）や「市村玉柏の長刀を持つ女武道」（細判紅絵、享保初期）といった作品も確認されており、漆絵や紅絵といった技法にも精通していたことがわかります。「市川門之助」の異版には「萩野伊三郎」という名も記されているなど、奥村源六の作品に関する情報は断片的にしか残っておらず、更なる研究が待たれます。

奥村源六に関する情報は断片的で、彼の生涯や作品の詳細については未解明な部分が多く残されています。しかし、わずかに残された作品や記録から、江戸時代中期の浮世絵界に貢献した重要な人物であったことは間違いありません。今後の研究により、彼の全貌が明らかになることが期待されます。

【参考文献】
日本浮世絵協会編　『原色浮世絵大百科事典』（第2巻）　大修館書店、1982年　※40頁
日本浮世絵協会編　『原色浮世絵大百科事典』（第3巻）　大修館書店、1982年　※137頁

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