鳥居清満

鳥居清満：江戸中期を彩った浮世絵師

初代鳥居清満は、江戸時代中期(1735年～1785年)に活躍した、卓越した浮世絵師です。鳥居派の三代目当主として、その名を歴史に刻みました。二代目鳥居清倍に師事した清満は、役者絵や美人画、そして草双紙の挿絵、番付絵、芝居看板絵、肉筆画、さらには『あぶな絵』と、その作風は多岐に渡ります。

延享から明和にかけての時代に活躍した彼は、鳥居派の伝統的な画法を忠実に守りながら、独自の芸術性を開花させました。特に紅摺絵においては、その高い技術と繊細な表現力で秀作を数多く残しています。単色刷りの紅摺絵だけでなく、四色以上の多色刷りの一枚絵も手がけ、当時の浮世絵界に多大な影響を与えました。

清満の作品は、国内外の美術館に収蔵されており、その芸術的価値は高く評価されています。代表作として、『振袖蝉丸 対面之琵琶』(青本、1747年刊行)、「枕相撲」(大判紅摺絵、江戸東京博物館など複数箇所所蔵)、「初代中村富十郎の白砂」(大細判紅摺絵、キヨッソーネ東洋美術館所蔵)などが挙げられます。これらの作品は、役者の姿を生き生きと捉え、当時の風俗や文化を伝える貴重な資料となっています。他にも、キヨッソーネ東洋美術館、平木浮世絵財団、ドレスデン国立版画館、大英博物館、ボストン美術館、東京国立博物館など、世界中の美術館に彼の作品が収蔵されていることは、彼の芸術的才能と国際的な評価の高さを示しています。

彼の作品には、宝暦期に制作された「悪七兵衛景清」、「千歳と三番叟」、「おまち・瀬川菊之丞」、「せいらいの清兵衛・松本幸四郎」、「那須右衛門・松本幸四郎」、「助六・市村亀蔵」、「不破の伴左衛門・市村亀蔵」、「山下金作 大谷広次」など、様々な題材と技法を用いた作品が含まれます。版元としては、江見屋吉右衛門、鱗形屋孫兵衛、奥村屋、丸屋小兵衛といった当時の著名な版元との協働も見られます。これらの作品は、版元の印などからも、当時の浮世絵制作の状況を知る上で貴重な手がかりとなっています。

清満の功績は、作品の数だけではありません。彼は鳥居派の隆盛に大きく貢献し、鳥居清広、鳥居清長、鳥居清経、鳥居清秀、鳥居清久、鳥居清近など、多くの優れた門弟を育成しました。「清満」という名は、彼の後継者にも受け継がれ、鳥居家の繁栄を支えたのです。彼の没後も、その弟子たちは鳥居派の伝統を継承し、発展させていきました。

初代清満の死後も、「清満」の名は、孫にあたる二代目、そしてその子である三代目へと受け継がれ、鳥居家の歴史に深く刻まれています。二代目は、草双紙の挿絵や美人画を中心に制作し、三代目は歌舞伎の看板絵や番付絵で活躍しました。このように、初代清満から続く「清満」の名は、鳥居派の伝統と発展を象徴する存在として、浮世絵の歴史に重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

彼の生涯と作品は、数多くの文献資料にも記録されています。藤懸静也『増訂浮世絵』、吉田漱『浮世絵の見方事典』、神戸新聞社他編『キヨッソーネ東洋美術館所蔵浮世絵展』、小林忠監修『浮世絵師列伝』、そして「大浮世絵展」企画委員会編『大浮世絵展』など、様々な書籍や展覧会を通して、初代鳥居清満の芸術は現代にまで伝えられ、研究・鑑賞されています。これらの資料は、彼の芸術性だけでなく、当時の社会状況や文化を知る上でも貴重な情報源となっています。

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