小泉武夫

小泉武夫について

小泉武夫（こいずみ たけお）は、1943年8月27日生まれの日本の農学者、発酵学者、文筆家であり、東京農業大学の名誉教授でもあります。彼の専門は発酵学と食品文化論、そして醸造学にわたります。

幼少期と教育

福島県小野町の造り酒屋に生まれた小泉は、6人兄弟の末っ子として育ちました。幼少期は元気いっぱいで、囲炉裏の灰に突っ込みそうになるほど活発でした。そのため、祖母に柱に帯でつながれるほどでしたが、右手に干物の鰊、左手に味噌を持たせるとおとなしくなったそうです。この頃から食への深い興味を育み、実家の大きな台所で多くの料理に関わるようになりました。

小泉が料理に没頭するきっかけは、小学校4年生で母を失ったことにあります。父から与えられた専用の台所と調理用具により、料理に情熱を注ぎました。当時、豊かな自然に囲まれた環境で、野兎や蛙などの野生動物を捕まえて食べることも好んでいました。

1962年には東京農業大学農学部の醸造学科に進学。元々は父の希望での進学でしたが、そこで発酵研究の魅力に取りつかれました。小泉は大学時代、実際に酵母やカビを観察し、楽しい実験を重ねました。特に、下宿先で密かに持ち帰ったもろみがバスの振動で溢れ出すというハプニングも経験。この大学での成果が認められ、首席で卒業し、そのまま助手として採用されました。

研究と教育のキャリア

小泉武夫は、1978年に「酵母の生成する香気に関する研究」で農学博士号を取得後、1982年には東京農業大学応用生物科学部の教授に就任しました。彼の指導の下、多くの杜氏や焼酎製造技術者が育ちました。また、1994年からは滋賀県余呉町にある日本発酵機構余呉研究所の所長も務めました。大学を定年退職した後も、その知識と経験を生かし多くの大学で客員教授となっています。

発酵学者としての彼は、特に京都での「菌塚」を訪れ、有用微生物を供養する活動も行っています。これは、彼にとって重要な精神的な行為でもあります。

文筆家としての活動

小泉は1994年から『日本経済新聞』でコラム「食あれば楽あり」を連載し、多くの読者に親しまれています。独自の言い回しや表現方法もあり、特に「ピュルピュルとよだれ」などの小泉造語は楽しく、食の魅力を巧みに伝えています。

また、「食魔亭」と呼ばれる自宅の台所で、様々な料理を自ら作り、特に「焼き納豆丼」を好んでいるといいます。

さらに、彼は「食の冒険家」として日本国内外を旅し、発酵食品の探求を続けています。その活動によって、多くのユニークなあだ名も持ち、「発酵仮面」や「走る酒壷」などが彼の愛称となっています。彼の趣味や特技は、料理の創作だけではなく、食文化について学んだ経験を元にした文筆活動にも及び、定年後も小説家としての道を歩んでいます。

人生哲学と食文化

小泉は自身の生活において、食べることが重要な役割を果たしていると認識しており、日々の食事を考えることが彼の人生の中心であると述べています。彼は不眠に悩んだ経験はなく、これまでの人生を振り返っても苦労や挫折は少なかったと語っています。

数多くの著書を持ち、その中で彼の考えや実践してきた食文化への思いが表現されています。小泉武夫は、食を通じて人々に楽しさと豊かさを伝え続ける重要な存在です。

もう一度検索