岩垂徳行

岩垂徳行：ゲーム音楽から広がる音の世界

日本の作曲家、編曲家、音楽プロデューサーである岩垂徳行（いわだれのりゆき）氏は、1964年 4月28日に長野県松本市で生まれ、現在も同地を活動拠点としています。主にゲームミュージックの分野でその名を知られていますが、活動の幅は広く、東京ディズニーリゾートのショー音楽やJR舞浜駅の発着メロディなど、様々な作曲・編曲を手掛けています。特にゲーム音楽においては、過去にソフトバンク主催の賞で、メガドライブ、セガサターン、ドリームキャストの各プラットフォーム部門で最優秀音楽賞を受賞しており、その実力は早くから高く評価されていました。

音楽への道のり

岩垂氏の音楽キャリアは、幼少期に遡ります。4歳からピアノを習い始めましたが、当初はピアノそのものよりも教室のカバンに興味があったというユニークなエピソードがあります。しかし、先生が弾く和音を聞き分けることに楽しみを見出し、自然と音感を養い、耳コピの能力を磨きました。小学校高学年からは音楽に触れる機会が増え、やがて「将来は音楽の仕事に就きたい」という思いを抱き、尚美学園音楽短期大学の音楽情報学科へと進学します。大学時代には、作曲を専門としていなかったにも関わらず自作曲が評価される経験をし、作曲家としての道が見え始めたと語っています。

大学卒業後は、知人の紹介で「箱バン」と呼ばれるライブハウス専属バンドでキーボードを担当します。この時期にブラック・ミュージック、ファンク、グループサウンズなど、多様なジャンルの音楽に触れ、バンドマスターから音楽理論やアレンジの実践的な知識を深く学びました。約4年間箱バンでの活動を続けた後、バンドマスターの負傷により仕事が減少したタイミングで、浪人生時代の友人からゲーム音楽のアレンジの依頼を受けます。これが、岩垂氏がゲーム業界へと足を踏み入れる直接のきっかけとなりました。

ゲーム音楽家として

ゲーム音楽家としての最初の仕事は、1990年に発売されたメガドライブ版『アフターバーナーII』のBGMコンバートでした。これを皮切りに、『ダライアスII』や『ラングリッサー』シリーズなど、数々のゲーム音楽を手掛けていきます。当時のゲームハードウェアには現代と比べて大きな制約があり、例えばメガドライブのFM音源は、シンセサイザーの名機DX-7よりもオペレーター数が少なく、音作りに制限があったといいます。岩垂氏はこのハードウェアの制約について言及しつつも、それ故に生まれた「ミニマムさ」の中にゲーム音楽ならではの魅力を感じていたと振り返っています。

キャリアを積む中で、作曲家の溝口功氏らと共にゲーム音楽制作会社「ツーファイブ」の設立に参画しました。しかし、会社が大きくなるにつれて作曲以外のマネジメント業務などが占める割合が増えたため、純粋な作曲活動に集中したいという思いから、同社を離れる決断をします。

独立後も、その才能はさらに輝きを増しました。特に『LUNAR』シリーズ、『グランディア』シリーズ、『逆転裁判』シリーズといった、ゲームアーツやカプコンの看板タイトルにおける音楽は、多くのプレイヤーに愛され、岩垂氏の代表作として知られています。これらの作品群に加え、恋愛シミュレーションゲームの『トゥルー・ラブストーリー』シリーズや、近年では『新・光神話パルテナの鏡』、『大乱闘スマブラザーズ』シリーズなど、様々なジャンルのゲーム音楽に携わっています。その活動範囲は国内に留まらず、「Japan Expo」など海外でのライブやレコーディングも精力的に行い、国際的な評価も高めています。

オーケストラ活動と人物像

岩垂氏はオーケストラへの造詣が深く、多くのゲームタイトルでオーケストラスコアの制作を手掛けています。特に『逆転裁判』シリーズのオーケストラアレンジは高く評価されています。また、指揮者としても長いキャリアを持ち、ゲーム音楽コンサートなどでタクトを振っています。後進の指導にも熱心で、Arc-hive Philharmonic WindsやGame Symphony Japanといった団体の顧問を務め、若手演奏家の育成やゲーム音楽の演奏機会創出に貢献しています。

プライベートでは、大学進学で上京して以来東京を拠点に活動していましたが、1998年に生まれ育った長野県松本市へとUターン移住しました。この決断には、子供たちが自然の中で遊べる環境を求めたことや、長野オリンピック開催を機に整備されたインターネット環境などのインフラが整ったことが影響していると語っています。

岩垂徳行氏は、初期のハードウェア制約下での作曲から、大規模なオーケストラ作品、そしてゲーム以外の様々なメディアでの音楽制作まで、幅広いスキルと経験を持つ稀有な音楽家です。その生み出すメロディは、数多くの作品世界に深みを与え、今なお多くのファンを魅了し続けています。

主な代表シリーズ（一部）

作品リストは膨大であるため、ここでは主要な代表シリーズを一部抜粋します。

LUNARシリーズ
ラングリッサーシリーズ
グランディアシリーズ
逆転裁判シリーズ
* トゥルー・ラブストーリーシリーズ

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