川上村文化センター図書館

川上村文化センター図書館は、長野県南佐久郡川上村にある公立図書館です。正式名称は川上村農村総合文化施設図書館ですが、一般的には川上村文化センター図書館として知られています。この図書館は「伝統にふれ、未来の夢を育む知的空間」を運営目標としており、日本で初めて24時間開館を実現した図書館として注目されています。また、自動貸出機を導入したことでも知られています。

歴史

開館の経緯（1991-1995）

川上村はレタス栽培が盛んな地域で、経済的に豊かになる一方で、村民は心の豊かさの喪失を懸念していました。そこで、ふるさと創生事業による交付金を活用し、文化事業を開始。コンサートや講演会を開催しましたが、既存施設の音響や照明の不備から多目的ホールの建設が求められるようになりました。同時期に、柏崎刈羽原子力発電所からの高圧電線設置に伴う補償金が村に交付され、この資金を基に総合文化施設の建設が決定しました。

1991年、川上村総合文化施設基本構想策定委員会が発足し、理想的な施設を目指し、図書館の24時間利用が盛り込まれました。当時の村長は、レタス栽培による好景気が終わる可能性を考慮し、「賢い村人」を育てるために図書館が必要だと考えました。複合施設建設に向けて、3つの建設推進委員会による検討とプロポーザル方式による基本設計が行われ、山下設計の案が採用されました。図書館部分では、24時間開館のための管理方法、無人時間帯の入退館・貸し出し方法、光熱費の節約方法などが検討されました。1993年に設計・監理の契約が締結され、1994年には図書館管理システムの工事が開始されました。当初は教育施設整備基金と地方債を充てる予定でしたが、農林水産省からの補助金も得られ、総工費は約25億3300万円となりました。

開館後（1995-）

1995年 10月1日、川上村文化センターが開館し、図書館と24時間図書館も同時に開館しました。文化センターは、図書館のほか298席のホール、郷土資料展示室などを備えています。開館当初、図書館は館長兼務の司書1人と臨時職員1人で運営され、図書約18,000冊、雑誌50誌、CD・LD約500枚を所蔵していました。開館当初からコンピュータシステムを導入し、利用者端末も5台設置されました。2014年1月には図書館システムが変更され、全ての図書にICタグが導入され、図書館利用カードもICカード化されました。

川上村文化センター

川上村文化センターは、総事業費約26億円をかけて建設された文化施設です。鉄筋コンクリート構造2階建てで、延床面積は20,876m2に及びます。ホール、図書館、ハイビジョンシアター、郷土資料・美術品展示室、談話室などが含まれます。

中核施設の「うぐいすホール」は、298席を備え、音楽会や講演会に利用されています。2か国語対応の同時通訳機も備えており、国際会議にも対応可能です。内装には、村の木であるカラマツが使用されています。入り口部分には「からまつ広場」が設けられ、モニュメントや古いピアノが展示されています。

24時間開館

川上村文化センター図書館には、24時間開館している「24時間図書館」があります。専用の入り口があり、利用者はカードリーダーに図書館利用カードを差し込み、暗証番号を入力して入館します。盗難防止のためにブックディテクションシステム（BDS）が設置されています。村内には書店やレンタルビデオ店がないため、24時間図書館は住民にとって不可欠な施設です。

24時間開館を主導した村長は、活字文化の重要性を強調し、自著で「村の自慢」と記しています。ただし、年中無休ではなく休館日が設定されています。

設置の経緯

川上村は農業が盛んで、特にレタス栽培が中心です。農繁期には農家は早朝から深夜まで作業に追われますが、農閑期にはサークル活動が活発になります。村は、住民の生活サイクルを考慮して、図書館の建設構想段階から24時間開館を検討しました。また、若者が深夜のコンビニエンスストアにたむろする状況を改善するためにも、24時間開館の図書館を建設しました。日本初の試みであったため、視察や情報収集を行い、図書館の一角に「24時間コーナー」を設けることとしました。貸し出しは自動貸出機を使用することで、図書館員の負担軽減、住民の利便性、光熱費の節約、セキュリティを両立させました。

反対意見とその対応

24時間図書館の導入には反対意見もありました。村議会からは盗難や子供のたまり場になるという懸念が示されましたが、村長は「盗んででも本を読みたいという気持ちが生まれるなら歓迎したい」と返答しました。実務的な対応として、警報装置や監視カメラを設置しました。また、文化センターへの投資が過剰であるという意見に対しては、「人材育成のための投資は将来に不可欠である」と反論しました。

実際の運用

開館当初は、新書や文庫本約4,000冊、ビデオ240本を所蔵していました。2005年には図書約6,000冊、ビデオ300本に増加しました。利用者の多くはビデオを借りており、「いつ来てもビデオがない」という状態だったようです。1日の平均貸出冊数は3.8冊で、利用者の多い時間帯は20時から22時です。伊藤・山本編著の『公立図書館の役割を考える』では、24時間開館は都市部で求められるサービスであるが、川上村では地域特有の事情により成り立っていると指摘されています。また、安易な24時間開館導入に警鐘を鳴らしています。

自動貸出機

開館当初は、図書用とビデオ用で別の自動貸出機を導入しました。2014年1月には、図書館システムを更新し、ICタグによる管理に変更。図書館カードもICカードに統合されました。

無人運用によるトラブル

大きなトラブルは発生していませんが、磁気テープの位置不良やバーコードの損傷で貸し出しができないことがありました。また、オートロックの故障も発生しました。

利用案内

川上村文化センター図書館の利用実績は、長野県内の図書館の中で上位に位置しています。24時間開館が住民本位のサービスとして功を奏しているとされています。

開館時間: 9時から17時まで（金曜日は10時から18時まで）
24時間図書館は24時間利用可能
休館日: 月曜日（祝日の場合は開館し、以後の最も近い平日に代休）、月末、特別整理期間、年末年始
24時間図書館は月末、特別整理期間の9時から翌日9時まで休館
貸出制限: 川上村に在住・通勤している者または館長が認めた者。
貸出可能点数: 図書・雑誌=制限なし、CD=2枚、ビデオ・DVD=各1点
貸出可能期間: 図書・雑誌=2週間、CD・ビデオ・DVD=1週間

予約、複写、インターネット利用（1時間以内）、DVD視聴可能。

蔵書・書架の特色

農業書を充実させているほか、物理学者・吉田順五の遺族から寄贈された「吉田文庫」を所蔵しています。書棚は車椅子利用者にも配慮し、4段に変更されています。また、館内には炬燵が設置されています。

交通

JR小海線信濃川上駅から自動車で10 - 15分
上信越自動車道佐久ICまたは中部横断自動車道佐久南ICより自動車で1時間20分
* 中央自動車道須玉ICまたは長坂ICより自動車で40分

川上村文化センターは川上村役場のすぐ近くにあります。

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