川崎宿

川崎宿の歴史と発展

川崎宿（かわさきしゅく）は、東海道五十三次の2番目の宿場町であり、現在の神奈川県川崎市川崎区に位置しています。この宿場は、1623年に設置され、品川宿から神奈川宿への中継地点として重要な役割を果たしました。元々は公式な宿場ではなかったものの、品川宿と神奈川宿の距離が長く、運送の負担が大きいために宿泊施設が整備されることになりました。

設置の背景

川崎宿は、東海道が整備された時期に設立されました。その設立過程では、地元農民に対する伝馬の負担が大きく、宿場の運営が難航しました。特に、設置後の数年間には農民や問屋場が窮状に陥り、宿役人が宿の廃止を求める事態ともなりました。しかし幕府は宿場の存続を決定し、支援を行うも、次第に重い負担が続きました。

田中休愚の貢献

その中で、田中休愚は、宿場の復興のために特に重要な役割を果たしました。彼は幕府に働きかけ、六郷の渡しの権益を取り付け、宿場への救済金を確保しました。これにより、川崎宿は再び活気を取り戻し、宿場存続のための基盤を築くことができました。

農民の苦労

川崎宿の困難は住民や農民だけでなく、近隣の農民にも及びました。1684年には新たに制定された助郷制度により、周辺の村が負担を強いられるようになり、過重な責任を負うこととなりました。負担の見返りはわずかであり、農作業ができずに多摩川の状況に影響されることもありました。こうした厳しい状況から、農民たちは時折、負担を回避するための努力をせざるを得ませんでした。

宿場の構造と衰退

川崎宿には、砂子、久根崎、新宿、小土呂の4町が存在し、田中本陣や佐藤本陣などの設けられた宿泊施設がありました。しかし、災害や財政難に見舞われ、宿場は次第に衰退しました。また、1857年にはオランダ人外交官のタウンゼント・ハリスが宿泊予定だったものの、荒廃のため別の宿泊所に移らざるを得ませんでした。

旅籠の実情

川崎宿には72軒の旅籠があり、その中では飯盛女を置く「飯売り旅籠」が特に新宿に多く見られました。これらの旅籠では、運営ルールがあったものの、実際には多くの問題が発生し、旅籠間での紛争も見られました。明治時代に入ると、「貸座敷」と称して営業を続ける店も現れ、観光地の賑わいを見せたものの、時代の変化に伴い閉店を余儀なくされる事態も起こりました。

近代への道

川崎宿は、1872年に日本初の鉄道が開通すると、その機能を失いました。これにより、宿場町としての役割は次第に薄れ、地域の発展に新たな道を開くこととなりました。その後、町村制の施行や市制の創設を経て、川崎市が発足し、今では政令指定都市としての地位を確立しました。近年では、川崎宿の歴史を紹介する「東海道かわさき宿交流館」も開館し、その歴史的な価値が再評価されています。

川崎宿は、交通の要衝としての使命を果たしつつ、多くの課題に直面してきた歴史的な場所です。それは単なる宿泊施設ではなく、川崎市の成り立ちや地域の暮らしが織りなす壮大な物語を物語っています。

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