弁内侍

弁内侍について

弁内侍（べんのないし、正体字：辨內侍）は、鎌倉時代初期に活躍した女流歌人であり、彼女の作品は当時の文学や文化を知るための重要な資料となっています。弁内侍は、1196年頃に生まれたとされ、父は藤原信実、母は不明です。彼女は、姉の藻璧門院少将と妹の後深草院少将内侍と共に「女房三十六歌仙」の一人として名を馳せました。

経歴

弁内侍の人生は、1243年8月に始まりました。この年、後嵯峨天皇の皇子である久仁親王が生後2ヶ月で東宮となり、彼女の仕えた当時からこの後、春宮弁という呼称で出仕が始まります。1246年、幼い東宮が後深草天皇として即位する際、弁内侍も内侍となり、妹と共に若き帝に仕えることとなります。彼女の任期は1259年の譲位まで続き、その後は公の職を退くことになりました。

弁内侍の日記、『弁内侍日記』は、1246年から1252年にかけての日々を綴った貴重な作品であり、彼女の感受性や歌人としての才を伺わせる一冊です。また、彼女は『続後撰和歌集』以降においても多くの作品を残しており、歌合などのイベントにも多数参加しました。

弁内侍は、従二位の法性寺雅平との間に一人の娘をもうけています。彼女は、1265年に妹の死を受けて出家し、その後は叡山の仰木の山里に住まいを構え、静かに晩年を送ります。1276年には、『現存三十六人詩歌』に彼女の名前が登場し、これは彼女が姉よりも長生きしていたことを示すものでもあります。

逸話

弁内侍とその妹は、みな歌人として高名でしたが、特に彼女と少将内侍は連歌の技術にも優れていたとされています。後嵯峨天皇が御幸の際、二人を連れて連歌を楽しんだという逸話もあります。また、1250年には天皇の月見の会においても、雨に阻まれる中で連歌を楽しむことができたとの記録が残されています。

彼女は、実材母から送られてきた歌に称賛の意を表し、その際には感激したとされています。さらに、知識人としての彼女の視点は、紫宸殿の賢聖障子に描かれている名臣たちの肖像について、「もしも外国人ではなく日本の賢人であったらよいのに」との発言を通じて、彼女の鋭い観察力が窺えます。

また、弁内侍の日記には、日本人の先例好きを揶揄する内容も含まれており、彼女が客観的な視点を持った女性であったことを示しています。彼女の作品や記録は、古代から近世にかけての女流文学の重要な一部として、現在でも高く評価されています。

作品

弁内侍の作品は、彼女の文学や芸術への寄与として重要です。彼女は、勅撰集や準勅撰連歌集への参加を通じて数多くの歌を残しました。また、弁内侍日記自体は彼女と妹の歌を集めたものであり、しばしば彼女の家集と見なされることもあります。このように、弁内侍の名前は今もなお、多くの文学研究の中で語られ続けています。

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