弘安徳政

弘安徳政の概要

弘安徳政（こうあんのとくせい）は、1284年から1285年の約1年半にわたり、鎌倉幕府において実施された一連の政治改革を指します。この改革は、執権であった北条時宗の死去を受け、外戚の安達泰盛が彼の子である貞時を支持し、幕府の政治体制の強化を推進したものです。また、同時期に亀山上皇のもとでも朝廷改革が行われたため、こちらも弘安徳政と同様に呼ばれることがあります。

改革の背景

この改革は、元寇という外的な危機に対応するため、鎌倉幕府が強固な政治基盤を構築することを目指したものでした。弘安7年の5月20日（1284年7月4日）には「弘安新式目」として38条の新しい法令が制定され、その後も100以上の追加法が施行されました。これらの法令は、主に以下のような内容から成り立っています。

主な法令の内容

1. 一宮・国分寺興行令: 各国の国分寺や一宮を守護の保護下に置くことを定めた。
2. 関東御領興行令: 幕府の経済基盤である関東の領地を保護し、御家人に対する統制を強めた。
3. 悪党禁圧令: 悪党に対して徹底的な取り締まりを行いました。
4. 流通経済統制令: 幕府が交通や流通を管理するため、河川や壕による経済活動を制限した。
5. 鎮西神領興行回復令: 九州の神社の土地を無償で回復し、売買を禁止した。
6. 倹約令: 御家人に対する倹約を促進した。
7. 田文調進令: 国内の土地に関する詳細な情報を集め、土地台帳を作成する制度。
8. 所領無償回復令: 過去の浮沈により失われた土地に関する救済策を設けました。

このような取り組みの背後には、鎌倉幕府の影響力を全国に広げ、特に元寇を経験した九州において政治的な安定を図る意図があったとされています。さらに六波羅探題や鎮西談議所の権限増強も図られました。

改革の困難と終焉

しかし、これらの改革に対しては、多くの反発があったため、実施からわずか76日後に方針の見直しが迫られました。改善策も年を越すことなく停止し、1285年11月17日の霜月騒動をもって泰盛が滅亡し、弘安徳政は事実上の終焉を迎えることとなります。この改革の評価は分かれており、泰盛が得宗権力と対立しながらも改革を進めたという見方と、逆にその権力を強化するための策として行ったという意見があります。

また、弘安徳政がその後の政治停滞や鎌倉幕府の崩壊の遠因となったことは間違いありません。なんと120年の歴史を持つ幕府の持続には、内部の改革と保守勢力の調整が必要とされたのです。結果として、この改革は幕府の権力拡大を目指したものでしたが、実際には両者の対立から政治的な停滞を招きました。

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